観光産業の地球温暖化への対応が観光の国際競争力優位に

月刊JTMレポート : 2008年6月号

カテゴリ : 海外旅行訪日旅行

執筆 : 小林 裕和(客員研究員) 

環境への取り組みは、すでに国の観光競争力を測る指標にまでなった。日本の観光産業、観光政策にとって、今後も魅力ある観光地、選ばれる観光地を実現するためには、何が重要なのか?

地球温暖化への対応が地球規模で進む中、観光産業における地球温暖化への対応は、今や観光の国際競争力を決める重要な要素となっている。

グリーン化の動きは、MICE分野でも取り入れられ始めている。MICE専門の業界紙「TTGmice」(2007年10月号)は、「会議のグリーン化 ~炭素排出を意識しているクライアントに対して、あなたは十分に"グリーン化"していますか~」というタイトルで特集記事を組み、MICE産業の中で環境への関心が着実に高まっていると指摘している。

アジアのあるイベントプランナーは、リサイクル品やフェアトレード(公平貿易)による商品を使うことによって、イベントのグリーン化を進めている。MICEのクライアント企業の中には、航空機による旅行やイベントなどが環境にどの程度の影響を及ぼすかに対して非常に関心を持っている会社もある。特に欧米のクライアントからの要望が、MICE産業におけるグリーン化を促進するとしている。  
シンガポールのDMCツアー・イースト社は、 どのようにして環境への影響を最小化するか、具体的にどうやってイベントをグリーン化するか、環境の専門家からアドバイスを受ける必要もあるとコメントしている。
シンガポールの国際会議場、サンテック・シンガポールは、雨水を屋根から集めて植木の散水に使うなどといった環境に配慮したデザインとなっている。今後は、まずリサイクル紙、リサイクルプラスチック、アルミ缶などの使用から始め、すべてのイベントのごみをリサイクルし、ブースからブローシャーまですべてを集めリサイクルする予定である。

日本のランドオペレータのところには、アメリカの旅行会社から、環境に配慮したインセンティブツアーを実現したいが、日本でそれは実現できるのかといった問合せがあった。また、同社の取引先である欧州の旅行会社のCSR(企業の社会的責任)担当役員から、環境にどのように配慮した経営を行っているのか、との質問を受けている。 欧州の旅行会社は、CSRの一環として契約オペレーターやホテルにも環境に配慮した運営を求めており、その状況を定期的に監査しているのである。
実際、アメリカ旅行業協会(ASTA)は、旅行が環境へ与える影響についての教育的要素を含んだ「グリーンプログラム」を行っている。また、ASTAは"グリーン化"トラベルビジネスの進め方や、旅行会社として必要な、環境に対する知識についての最新情報を受けとれるサービスも提供している 。
全世界の観光産業の二酸化炭素排出量は年間約120億トンで、排出量全体の約5%といわれ、他の産業に比較するとそれほど高くはない。UNWTOの予測によれば、世界の旅行者の増加により、観光産業の二酸化炭素排出総量は2005年から2035年までに約2.5倍になると見込まれている。 (「国際旅行到着者数が年率4%で増加する」としたシナリオのケース)
 
こうした世界の潮流の中で、環境問題への取り組み は観光に関連する個々の企業にとっても重要な課題であり、企業の競争力にもつながる。さらに日本が今後も魅力ある観光地、選ばれる観光地であるために、地域レベル・国レベルでの観光産業の地球温暖化への対応が喫緊の課題となってきたといえよう。


<参考ホームページ>
世界経済フォーラム「旅行・観光競争力レポート」
http://www.weforum.org/en/initiatives/gcp/TravelandTourismReport/index.htm

国連世界観光機関 UNWTO 気候変動とツーリズム
http://www.unwto.org/climate/index.php

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