祭りは地方自治の原点

月刊JTMレポート : 2008年7月号

カテゴリ : 国内旅行地域活性化

執筆 : 大下 茂(客員研究員) 

伝統を刻んできた祭りには、地域固有のしきたりがある。祭りを継承していく中で、住民意識をまとめていく方法や、決められた方針に基づいて物事を一貫して継続してゆく方法を体得する。祭りのしきたりの中に観光まちづくりを進めるためのヒントがある。

笛と太鼓に刻まれるお囃子、独特のリズムに心が躍る。梅雨の終わりの暑い時期を迎える頃、何処からともなく聴こえてくるこの音色は、わが国独自の風物詩だ。山鉾や人形を飾った山車を引き廻す勇壮な祭り、神輿を担いで神を迎え町内を練り歩く祭り、鎮守の森の社の周りで繰り広げられる小さいが心が温まる祭りなど、様々な祭りがある。祭りは、地域住民の誇りと愛着の対象として、地域を代表し、地域に深く根づいている。
佐原(千葉県香取市)は、「佐原の大祭」で有名である。この祭礼は3百余年の歴史をもち、2004年に重要無形民俗文化財に指定された。利根川の舟運によって経済的に発展した佐原は、江戸文化を積極的に取り入れ、江戸から一流の彫物師や人形師を招聘、現在の25台の屋台をつくったのである。現在アピールしている「江戸優り」は、ここに起源を持つ。街なかを流れる小野川を境に、夏の本宿・八坂神社祇園祭と、秋の諏訪神社大祭が催され、合計約70万人以上の見物客が訪れる。祭りの日には、佐原を巣立っていった若者達も必ず帰ってくる。
300年の歴史の最大の特徴は、この祭礼が町衆だけの力によって継承されていることである。そこには町衆の中での独自のしきたりがある。町内の総意によって祭りの開催が決定され、寄付集め、下座交渉、山車コースの検討等、祭りに関わる交渉事も自主的に進められる。祭りの仕切りは当番制(年番)で、前後3年(見習い3年、本番3年、フォローアップ3年)、合計で9年間大祭の運営にあたる。人々の意識をまとめることや、一貫性を持って地域のしきたりを継続してゆくことなどのまちづくりに必要な手法が、祭りを継承していく中で自然と町衆の身につく。祭りの伝統を継承することが、地域の品質・品格や活力の維持につながっているのである。
地域の風俗習慣、民俗芸能、民俗技術等は、文化の継承という面で注目されがちだが、「地域のしきたり」の実践を通じて、地域の品質と品格を維持していることも大切な効用である。地域の祭りの背景にあるしきたりこそ、観光まちづくりの規範となり得るだろう。

jr_0807_18.jpg佐原の大祭には、毎年多くの外国人が訪れている。伝統行事であるお祭りでは関係者以外の参加が認めらないことが多いが、町内の人と一緒になって山車を引き回す等、市民として迎えられていることもまた、好評を得ている秘訣となっている。

jr_0807_19.gif重要無形民俗文化財指定とは、文化財保護法に基づき国が指定するもので、風俗習慣、民俗芸能、民俗技術として評価された255件がこれまで指定されている。風俗習慣の中の祭礼(信仰)は53件であり、佐原の大祭は、青森のねぶたや秋田の竿灯等と同じ指定である。

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