国際グリーンツーリズム:イタリアの事例から学ぶ

月刊JTMレポート : 2008年11月号

カテゴリ : 地域活性化訪日旅行

執筆 : 星原 由美子(客員研究員)
Nadia Lombardo 

インバウンドの2,000万人時代に向け、「リピーター」、「FIT」、「地域」がこれからの訪日外国人誘致のキーワードとなってくる。これらのキーワードに応えうる観光資源のひとつに「日本の田舎」があげられる。「日本の田舎」を日本の観光魅力のひとつとして世界に発信するために、グリーンツーリズムの盛んなイタリアの事例を紹介する。

日本では、農林水産省が「農山漁村地域において自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動」を「グリーンツーリズム」と定義している。


一方、イタリアでは、「グリーンツーリズム」という言葉は、アグリツーリズム(アグリツーリズモ) やルーラルツーリズム などを含む自然・文化環境に関わる様々な形態の観光に使われることが多い。イタリア人旅行者の10.2%、外国人旅行者の1.8%が、イタリア旅行の目的がグリーンツーリズムであると答えている(Unioncamere- ISNART調査)。また、イタリアでのグリーンツーリズムのピークシーズンは6月から7月で、この時期の客室稼働率はイタリア観光全体の客室稼働率の平均を上回っている(客室稼働率季節変動図を参照)。


外国からイタリアを訪れる旅行者の中心は、オランダ、英国、ドイツなどヨーロッパからの旅行経験豊富な個人旅行者で、口コミを最も重要な情報手段としている。また、要求レベルも高く、特に食事やワインの質、サービスの質に対しては、コストパフォーマンスを重んじる傾向にあり、さらに活動的で他文化への興味や関心を持ち、環境問題や社会問題にも敏感である。
また、イタリア独特のアグリツーリズモは、農業を手伝いながら農家に滞在する旅行形態で、農家の1室または離れに宿泊する。伝統的な農村地の建物だが、旅行者向けに改造されている。滞在期間中の体験プログラムが充実しており、フルーツ狩りや野菜の収穫、乗馬、ワインやオリーブオイルのテイスティングなどの様々な体験や、地元料理や伝統工芸などを学ぶことができる。


こういった旅行スタイルが発展した背景には、アグリツーリズモを支える組織団体の存在が大きい。イタリアには、現在3つの協会があり、様々な基準の設定やプロモーション活動、オンライン・電話予約受付などの事務機能を担っており、品質保証の認定制度を設けている協会もある。1965年に設立された協会(Agriturist)は、イタリア全土にオフィスを持ち、1,600の農家民泊を提供している。また、イタリア語、英語、フランス語、ドイツ語によるウェブサイト "Farm Holidays"や雑誌"Agrituristi"等を通して情報提供並びに予約の受付を行っている。さらに、"Agriturist Qualita"という農家のサービスや施設の品質を保証する認証制度を設けている。
一方、日本における日本人向けのグリーンツーリズムは、着地型観光やニューツーリズムという視点から認知度が高まりつつあるが、外国人向けに関しては、まだほとんど未整備の状態である。


(財)都市農山漁村交流活性化機構では、国際グリーン・ツーリズムモデル地区を設定し、平成18年度、19年度でモニターツアーを実施してきたが、受け入れ環境の整備や観光メニューなどに課題が残っている。経験豊富で、環境問題や社会問題にも敏感な外国人「グリーンツーリスト」の受け入れには、設備やービスに関する国際的に通用する基準を設け、体制整備をしつつ、多種多様かつ通り一遍等ではない地域独自の観光メニューの開発が必要であろう。

図:客室稼働率季節波動
jr_0811_16.gif
出所: Osservatorio Turismo 2007, ISNART)

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