月刊JTMレポート : 2009年4月号
執筆 : 小林裕和(客員研究員)
2003年のビジット・ジャパン・キャンペーン開始以来、数的に拡大してきた訪日市場。現在は世界経済の停滞などにより踊り場を迎えているが、数的な拡大とともに、市場ごとの特徴も出てきている。今回は、訪日リピーター率の高い香港と台湾市場の特徴を比較し、その回復に向けてのヒントを探る。
訪日外客数の2009年2月実績が発表された。これによると、対前年マイナス41.3%で7ヶ月連続の減少となり、ビジットジャパンキャンペーン(VJC)対象主要12市場すべてで対前年同月比マイナスとなった。昨年は2月だった旧正月が1月末にずれた影響もあるが、世界景気の後退、金融危機、円高などの影響が大きい。
7年目を迎えるビジットジャパンキャンペーンは、これまで訪日市場拡大に対して着実に実績を上げてきた。VJCが開始された2003年に521万人だった訪日外客数が、2008年には835万人にまで増加し、5年間で314万人増、1.6倍の市場規模となった。
さて、順調に成長してきた訪日市場を更に拡大させるための具体策がここから先の問題である。それを考えるためには、訪日客増加の背景にある、各市場の特徴を知る必要がある。訪日「リピーター率」は、市場の成熟度を測るひとつの指標となるが、先般、JNTOから発表された「訪日外客訪問地調査2008 結果速報」からリピーター率を見てみたい。
図表1のように訪日旅行者に占めるリピーターの割合は、香港が79%、台湾が72.1%と、他の市場と比べて突出して高いことがわかる。また訪日目的を見ると、両市場は「観光」目的がそれぞれ85.5%、73.6%となっており、やはり他の市場と比べて高い(図表2)。
図表1

図表2

出典:JNTO訪日外客訪問地調査2008 結果速報
ところがリピーター率が高く、観光の割合が高いということで共通する両国だが、それぞれの市場の旅行形態は異なっている。
団体旅行と個人旅行(個人自由型ツアーも含む)の比率を見ると、台湾は団体旅行が5割であるのに対して、香港は団体旅行が3割、個人旅行が約7割となっている。(図表3)
両地域ともに日本が人気の旅行先であることがわかるが、日本を何度も団体旅行で訪れる台湾人と、ツアーではなく個人旅行を主体とした、旅慣れた香港人、という、旅行者のプロフィールが浮かんでくる。
図表3

出典:JNTO訪日外客訪問地調査2008 結果速報
これらのプロフィールの違いから、マーケティング戦略上の仮説が導かれる。
台湾では、旅行会社が旅行の主たる流通チャネルであるので、旅行会社を対象としたプロモーションが重要であるが、香港の個人客を取り込むためには、香港人にダイレクトに訴求するプロモーション戦略がより効果的であると考えられる。
個人旅行を受け入れるための体制を強化することも重要だ。ツアーリーダーが同行する団体旅行であれば、言葉の違いはそれほど問題にならないが、旅先で旅行情報を得ようとする個人旅行者にとって、言語は重要な問題となる。先般、ファムトリップで日本を訪れた香港の旅行会社の担当者は、広東語を話す観光客への対応強化の必要性を強調していた。
とはいえ、あらゆる観光地で満遍なく広東語の対応をすることは現実的ではない。まずは観光案内所に繁体字のパンフレットを用意する。繁体字で書かれたパンフレットであれば台湾からの旅行者にも対応できる。宿泊施設や土産屋などでのコミュニケーション用には、地域全体で広東語の「指差し会話集」を活用したい。また「旅慣れた個人客の多い香港人」を取り込むには、旅先で自由に動けるレンタカーも有効であるが、これまではやはり言語の課題が大きかった。
沖縄では、4月より、日本語、英語、中国語(繁体字、簡体字)、韓国語の5言語で操作ができる多言語ナビを搭載したレンタカーのサービスが始まった。このように、地域全体で香港からのお客様の受け入れ体制が整っていることは、日本をよく知った香港市場に大きなアピールとなるだろう。
香港からの訪日旅行者は、アジア主要4地域(韓国、台湾、中国、香港)のうち日本国内での消費額が一番高い(一人当たり14.3万円、「JNTO訪日外客消費動向調査2007(速報))。ぜひ今後積極的に取り組みたい市場である。訪日旅行市場が小休止しているこの期間に、ぜひ取り組んでみたらどうだろうか。
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