月刊JTMレポート : 2010年2月号
執筆 : 野村 尚司(客員研究員)
オープンスカイ~その流れと日本における課題~
現在、オープンスカイが話題になっています。
オープンスカイとは、いわゆる「空の自由化」で、国際航空における政府規制を事実上撤廃することです。
戦後、国際航空の権益については政府間で交渉を行い路線・輸送力・国籍別の航空企業数などを決定してきました。近年では経済のグローバル化に伴い、ヒトやモノの移動が地球規模で必要となった状況を踏まえ、国際航空にも時代に応じた変化が求められるようになりました。そこで米国政府は、1990年代半ばに競争促進を主眼に置いた航空政策を発表しました。これは市場原理の働く公平な世界的航空市場の実現、航空企業参入の自由などを掲げており、オープンスカイの基本的な考え方となっています。これまで日本政府は、既存の航空権益の内容が米国側に有利であることを理由にオープンスカイの受け入れは行いませんでした。しかし2009年12月に日米両政府は、権益の格差解消を条件としてオープンスカイに関する合意に達しました。決定された内容は以下の通りです。
これによって実現される利点とは、
では、オープンスカイ実施後の課題とはどんなことでしょうか。
1番目に今後首都圏空港の発着権配分が重要な意味合いを持ちます。
日本の国際航空需要は専ら成田・羽田に集中しています。これまで空港容量不足から、需要に対応ができない状態が続きました。2009年現在で成田では米系企業が28%の発着枠シェアを持っており、その権益は著しく米国側に有利と判断されています。日米両政府はその格差解消のため、米国側が持つ成田の発着権シェアを低下させることで合意しました。2009年秋の成田B滑走路延伸完成に続き、2010年秋の羽田空港の新滑走路と新国際線ターミナル運用開始などにより、成田・羽田の発着容量は飛躍的に増大します。しかし日本政府はその発着権に関し、運航上の安全面なども加味して徐々に増加させる姿勢を示しています。こうした状況下、今後成田・羽田の発着権配分如何により、各航空企業や航空アライアンスの事業展開に質・量両面での影響が出てくると考えられます。
2番目は消費者保護の必要性です。
元来オープンスカイは、多数の航空企業間による競争促進で、サービス向上や運賃低下効果など消費者の利益向上を企図しています。他方、企業間業務提携が同じ航空アライアンス内で進むことによって、アライアンス自身の競争力強化につながります。よって少数の航空アライアンス間競争へと発展し、少数独占による競争低下の可能性が懸念されます。そのためオープンスカイ下の包括的業務提携では、政府による独禁法の適用除外認可が必要となっています。政府により公正な競争が保障されないと判断された場合は、認可が下りない可能性があります。これは消費者保護の観点から行われるものです。
今後、オープンスカイにより消費者にとっては運賃低下や利用航空会社の選択の幅が広がり、また利用可能路線網が充実して利便性も高まります。政府の立場では消費者の利益を保護しつつ、国際航空の健全な発展を目指しています。また企業の視点では自由化による企業間競争の波にさらされる一方、提携企業の資源をお互いに利用しつつ費用削減と収入機会の増加が同時に実現できます。今後それは各航空会社の単位を超え、航空アライアンス同士の競争を促進すると考えられます。
<注> 主要な航空アライアンスとしてはスターアライアンス、ワンワールド、スカイチームなどがあります。
[参考]オープンスカイとは?(観光用語辞典より)
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