観光圏整備法とニューツーリズム

観光圏整備法が施行され、地域が広域的に連携し「観光圏」の整備を行うことで、観光客が2泊3日以上滞在できるエリアの形成を目指し、国際競争力の高い魅力ある観光地づくりの推進を図る動きが始まっています。

中根 裕

中根 裕 主席研究員

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2008年7月23日に、観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律(平成20年法律第39号。観光圏整備法。)が施行されました。
この法律は、地域が広域的に連携し「観光圏」の整備を行うことで、観光客が2泊3日以上滞在できるエリアの形成を目指し、国際競争力の高い魅力ある観光地づくりの推進を図るものです。

また、自治体が作成する「観光圏整備計画」に沿って、民間など複数の事業主体が共同で、宿泊サービスの向上や観光資源を活用したサービスの開発などといった「観光圏整備事業」を行う場合、観光圏整備事業費補助金や旅行業法の特例、農山漁村活性化プロジェクト交付金などの制度で地域の取り組みを国が支援する事業です。これに対し2008年の第一次認定で16の地域が認定され(別図)、現在平成20年度の追加申請を受け付けています。
>>観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律について

この観光圏整備法の主たる狙いは、国内観光旅行の連泊、滞在化にあり、具体的には、観光立国推進基本計画の目標の一つである「日本人の国内観光旅行による1人当たりの宿泊数を平成22年度までにもう1泊増やし、年間4泊にすること」にあります。

宿泊化を促進する上で、最も中核となるべきは観光地の宿泊施設です。宿泊施設のサービスや宿泊システムを改善するのは勿論ですが、地域に泊まりたい、連泊したいとするニーズを生み出すには、宿泊施設の中だけの話ではありません。宿泊した前、後日に地域で何を観光するか、楽しめるかが、この広域圏の地域連携で取り組むポイントであり、そこに従来からの観光資源や観光事業者だけでなく、ニューツーリズムの資源や人材が一緒になって魅力ある宿泊プランを創出することが問われています。

逆にみれば地域でニューツーリズムに取り組む方々が個々に奮闘しても限界があります。今回の観光圏整備法は、その意味で地域のニューツーリズム資源がまとまって宿泊施設や観光事業者と共に、マーケットへ売り出すチャンスとも言えるでしょう。

では旅行会社の立場として、この観光圏の動きにどう対応すべきでしょうか?以前このコラムで「大手旅行会社のネックはニューツーリズムの開発・商品化コストである」と書きました。個々の施設や資源としてでなく、観光圏のまとまりとして、ニューツーリズムの資源を新たな国内旅行商品に組み込むことが出来るのであれば、旅行会社の国内旅行商品の新たなビジネスモデル、も見えてくるのでないでしょうか?それには観光圏から新しい観光資源や商品コンテンツが出てくるのを待つのでは今までの旅行会社の立場と変わりません。今までにない魅力的な観光圏旅行商品を販売する立場から、一緒になって旅行商品化のプロデュースをし、自社ブランドへ繋げる、という「一歩踏み込んだ地域と旅行会社の関係にチャレンジする=新たな旅行会社のビジネスモデル開拓」の好機であるとも言えます。