資源やサービスの満足度の改善(観光経済新聞 2013年6月22日掲載)

「JTB地域パワーインデックス」では、観光地の資源・サービス項目に対する個別満足度と、これらが観光地の総合満足度にどの程度貢献するかを分析している。長野県のある温泉観光地を例として、観光地の課題と性格や資源・サービスの満足度をデータから考察する。

中根 裕

中根 裕 主席研究員

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「JTB地域パワーインデックス」では、観光地の資源・サービス項目に対する個別満足度と、これらが観光地の総合満足度にどの程度貢献するかを分析している。つまり個々の資源・サービス項目の満足度は重要だが、「この観光地は良かった」という全体の満足度に対する影響度は各々一律ではないのだ。そこで観光客にとって何に対する満足が観光地全体の評価につながるのかを測ろうとしたものである。

図は長野県のある温泉観光地を例として示したものである。横軸が個々の資源やサービスに対する満足度で、縦軸が観光地の総合満足度への影響度である。両軸を平均値で交差させた際、に各項目が四つの象限のどれに位置するかで、観光地の課題と性格が表れてくる。

右上第1象限は個々の満足度が高いと共に観光地の総合満足度への影響度が高いポジションとなる。いわば観光地の差別化やブランド化にも資する資源やサービスと言え、さらに磨きアピールすることが望まれる。左上の第2象限はこの事例には該当がないが、「観光客の評価は高くなく、観光地全体の評価への影響が大きい」ポジションといえる。即ちこの資源・サービスの低評価が観光地全体の低評価につながる恐れもあり、早急に検証と対応を要する。続く左下第3象限は満足度が低く、また総合満足度への影響も大きくない。よって、無視されがちだが、放置すれば前述の第2象限に移りかねず、項目が多くなると観光地全体の評価を下げることになる。右下の第4象限は、満足度は高いものの総合満足度への影響度は高くない。満足度が高いからそれで十分とするのでなく、第1象限により多くの資源やサービスが現れるよう取り組むかが大切である。該当する資源やサービスのレベルや独自性を磨けば、総合満足度への影響度が上がり、第1象限へのレベルアップが見込まれる。

「宿泊施設」は本来個別の資源やサービスの中で最も総合満足度に影響を与えるべき項目で、まずは個々の施設のレベルアップが第一である。加えて図の事例で言えば、第1象限にあり、評価の高い「地域の観光・体験・活動」という宿泊以外の資源と連携した宿泊商品化を検討するのも一つの方策である。いずれにせよ第1象限を目指し、宿泊施設に対する満足度をあげ、総合満足度に影響を与える取り組みの強化により「ぜひ泊まってみたい観光地」と称されるのである。