ごあいさつ

ツーリズムを取り巻く環境は今、まさに歴史的な転換点にあります。 訪日インバウンド需要が急拡大する一方で、オーバーツーリズムの顕在化や地域格差、深刻な人材不足など、私たちが直面する課題は、より構造的かつ複雑な様相を強めています。

経営学の父、ピーター・ドラッカーは次のような言葉を遺しています。
「計画は未来の意思決定に関わるものではない。明日何をするべきかではなく、不確実な明日のために今日何をなすべきかである」
この言葉が示す通り、VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)と呼ばれる先行きが不透明な時代において私たちが問われるのは、今日この場で「何をやり、何をやらないのか」という決断そのものです。その意思決定のスピードと質こそが、地域や事業の命運を左右するといっても過言ではありません。

これまでの意思決定にあたっては、データや理論に基づく合理的判断が重視されてきました。近年はAIの進化により、分析や予測の精度も飛躍的に向上しています。しかしながら、混迷を極める経営や地域づくりの現場、いわば答えのない世界において、決定的な役割を果たすのは、たゆまぬ現場経験の蓄積から研ぎ澄まされた「直感」です。もちろん、私はこの直感を、根拠なき「その場の勘任せ」や「属人的な判断」として捉えているわけではありません。
パナソニックの創業者・松下幸之助は、次のように述べています。
「カンというと、一般的には何となく非科学的で、曖昧なもののように思われるけれども、修練に修練をつみ重ねたところから生まれるカンというものは、科学でも及ばぬほどの正確性、適確性を持っているのである」
近年の経営学においても、直感は十分な経験と深い洞察、そして責任ある立場という背景があって初めて有効に機能する、極めて高度な知的プロセスであることが証明されつつあります。
ゆえに私たちの役割は、データによって現状を可視化しながらも、それだけにとどまらず、現場で培われた「カン」を実効性のある戦略へと昇華させる――その「精緻な設計図」を、皆さまと共に描き出すことだと考えます。
今や観光は、独立した一産業という枠組みを越え、あらゆる分野との有機的な接続なくして、持続可能な地域運営や企業経営は成立し得ません。

シンクタンク・コンサルタントとして、時には客観的なデータをもって警鐘を鳴らす「ブレーキ役」となり、時には現場の判断を力強く後押しする「伴走役」となること。地域や企業の皆さまが自らの価値を再認識し、誇りを持って次の一手を選択できる状態を創り出すこと。
私たちは、皆さまと志を共有しながら、ひとつひとつの課題に対して、現場に根差した「解」を着実に実装してまいります。

今後とも、より一層のご支援とご指導を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

2026年7月
JTB総合研究所
代表取締役 社長執行役員
風間 欣人