日本人旅行者が世界一
一人旅をする日本人の割合が、世界で最も高い結果となりました。
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今、日本で「一人旅」が静かな広がりをみせています。ユーロモニターが2024年に行った調査によると、「一人旅をする」と答えた人の割合は、調査対象となった39か国中、日本が最も多く、およそ5人に1人という結果になりました(*1)。また、観光庁の調査でも、一人旅経験者の人数が、コロナ禍以前の2019年と比較して約250万人も増加していることが明らかになっています(*2)。

(出典:観光庁:旅行観光消費動向調査より2018年~2024年の旅行目的が「観光・レクリエーション」の人数を集計しJTB総合研究所が作成)
日本は比較的、治安がよいこともあり、もともと「ひとりカラオケ」など一人の空間がサービスとして成り立ちやすかったこと、コロナ禍で他者との接触が制限されたこと、デジタル技術の進展で、自分自身でも情報を得たり、旅行中も家族や友人とオンラインで繋がることができたりなど、「一人旅」でも心配や寂しさが少なくなった、といったことが後押しとなったと考えられます。
では、一人旅の魅力とはなんでしょうか。筆者が考える「一人旅」の最大の魅力は、「自由度の高さ」です。公益社団法人日本観光振興協会の調査では、自分が一人旅をすることについてどう思うかのポジティブな声としては、「自分の思い通りに行動できることが良い」、「誰にも干渉されなくて気が楽」と答えた人が約4割超で上位となりました。同行者の都合に左右されず、自分のペースで、好きなことを思う存分楽しむ。同行者に気を遣う必要もなく、すべてを「自分の意思で決められる」ということが、一人旅ならではの醍醐味ではないでしょうか。
しかし一方で、一人旅については、不安や寂しさを感じるといった声もみられました。前述の調査の中で、特に女性回答者の4割以上が「安全面が不安」と答えています。また、「誰かと一緒のほうが楽しい」「一人では寂しい」といった回答も3割以上にのぼりました(*3)。さらに費用面でも、一人旅行者は宿泊観光では友人との旅行よりも割高になる傾向があり、特に移動費が大きな負担となっていることも分かっています(*2)。
こうした一人旅へのハードルを下げるため、旅行会社もさまざまなツアーやプランを提供しています。たとえば、「全員おひとり様参加限定ツアー」では、全員が一人参加であるため、新しい交流が生まれやすい環境が整っています。また、女性限定ツアーや添乗員付きプランなど、安全面への配慮がなされた商品が提供されています。費用面では旅行費が高くなりがちな一人旅の特徴を踏まえ、「直前割引プラン」の利用を促すなど、選択肢は着実に広がっています。
働き方の多様化も一人旅の後押しとなっています。仕事と旅行を両立させる「ワーケーション」や、出張先で観光を楽しむ「ブレジャー」といったスタイルも定着しつつあり、自分のスケジュールだけで自由に旅に出ることが、以前よりも容易になりました。
一人旅だからこそ、プライベートでもビジネスの延長線上でもふらっと出掛けることができます。一人旅に対しての不安や課題を軽減し、一人旅を後押しするサービスや環境づくりをより一層促進するなど、時代の流れを意識した取り組みが、旅の可能性をさらに広げていくかもしれません。(MDK)
参考文献
1.Euromonitor International「世界一の「一人旅」国、日本。コロナ禍で一人旅への見方が大きく変化」https://www.euromonitor.com/press/press-releases/june-2024/japan_the_worlds_most_solo_traveller_country
2.観光庁、旅行・観光消費動向調査、2018年~2024年
3.公益社団法人日本観光振興協会、2019年、「一人旅の実態」
https://www.nihon-kankou.or.jp/home/userfiles/files/hitoritabi01.pdf