1人当たり26.4Lの減少

成人1人当たりの年間酒類消費数量が30年で26.4L減少
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日本人のアルコール飲料の消費量は長期的に減少傾向にあります。国税庁によると、成人1人当たりの年間酒類消費量は1992年の101.8Lから2022年には75.4Lへと、30年間で26.4L減少しています。2022年の厚生労働省『国民健康・栄養調査』での飲酒頻度に関する調査結果によると、「ほとんど飲まない」が15.3%、「やめた」が2.6%、「飲まない(飲めない)」が39.4%となっており、合計すると57.3%、つまり過半数の人が日常的に飲酒をしていないという結果となりました。世界的にも同様の変化がみられ、WHOのGlobal status report on alcohol and health 2018によると、2000年から2016年の間で世界的に約5%「飲酒する人の割合」が減少しています。
このような飲酒傾向の変化は、観光業界にも変化をもたらしています。2023年にエクスペディア・グループは、2024年の旅行トレンドを「Unpack ’24」にまとめ、「ノンアル旅」をトレンドのひとつとして挙げました。同社の調査によれば、「アルコールフリーのドリンクを頼みやすいホテルでの宿泊に関心がある」と回答した旅行者は約半数に上りました(世界14地域・2万人を対象とした調査)。
こうした需要に応えるために、高級ホテルを中心に多くのホテルや飲食店が、ノンアルコールカクテルや地元野菜や果物を使ったジュースなど、バラエティ豊かなソフトドリンクの選択肢を提供し、アルコール飲料を飲めない人の滞在価値の向上を図っています。近年、ノンアルコールカクテル「モクテル」(「Mock(模倣する)」と「Cocktail(カクテル)」を組合せたイギリス発祥の造語)があるバーを見かける機会も増えてきました。
また、飲酒傾向の変化は、旅行先での夜の過ごし方が多様化している背景の一つと考えられます。夜間の美術館鑑賞、庭園のライトアップ、夜景スポットを巡るドライブ、夜の野生動物観察など、夜の観光体験が人気を集めています。加えて、こうした傾向は旅行先での「早朝の過ごし方」にも影響を与えているようです。日の出を見るための早朝ハイキングや、朝市での地元の新鮮な食材探索、早朝の寺社仏閣参拝などの観光体験がますます注目されています。
観光事業者は、ノンアルコール飲料の拡充や新たな観光体験を創出することで、「旅行者の渇き」を新しい形で満たすことができるかもしれません。(MS)
<参考>
国税庁『酒レポート 令和6年6月』図2「成人1人当たり酒類消費数量の推移」
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2024/pdf/0002.pdf
厚生労働省『国民健康・栄養調査』「飲酒の頻度」令和4年
https://www.mhlw.go.jp/content/001461144.pdf
WHO “Global status report on alcohol and health 2018”,3.1.5 Trends in current drinking and abstention
(「飲酒する人の割合」は、15歳以上で過去12カ月にアルコール飲料を摂取した人の割合)
https://iris.who.int/server/api/core/bitstreams/9530de1c-1fd2-4c20-a167-ec6ba7cb00c3/content
エクスペディア・グループ “Unpack’24”
https://www.expedia.co.jp/stories/2024-travel-trends/