応募倍率は、1.9倍
東京都の市民農園の応募倍率は、区部平均で1.9倍
数字を
読み解く
東京都内には21,936区画の「市民農園」が開設されており、そのうち東京都区部の応募倍率は1.9倍、都全体平均でも1.6倍に達しています(令和6年3月末現在)。この倍率から、都市生活者の「農」への関心がうかがえます。
こうした背景には、都市農業の持つ多様な役割が関係しています。都市農業には、複数の機能(新鮮な農産物の供給、農業体験・交流活動の場、心やすらぐ緑地空間、災害時の防災空間、国土・環境の保全、都市住民の農業への理解の醸成)を有しており、単なる農地を超えた社会的機能を果たしています。
東京都では、身近に農作業を行うことができる場所として、市民農園(443か所)と農業体験農園(147か所)を開設しています。市民農園は利用者が自由に栽培できる代わりに、苗や種、肥料、農具などの必要資材の準備が必要です。農業体験農園では、農業者の指導やカリキュラムのもと利用者が農作業を行う仕組みとなっており、必要資材の用意もあります。初心者でも安心して始められ、東京都区部の応募倍率も1.6倍と高くなっています。都内の農業体験農園のうち8割弱が、農家自身が主体となって運営をしており、農業への理解を深める教育的な役割も担っています。
農業の現場では、高齢化や後継者不足により耕作放棄地の増加が問題視されていますが、「農に関わる人」が増えていくことは、将来的な担い手の裾野が広がる希望の兆しといえるのではないでしょうか。さらに、地域とのつながりを生む場としても注目されています。利用者同士の交流はもちろん、地元の農家や自治体との連携を通じて、地域コミュニティの再生にも寄与する可能性があります。
都市と農、個人と地域、自然と生活。これらをつなぐ接点としての都市農業は、今後ますますその価値を高めていくことでしょう。1.6倍という倍率の裏には、社会全体が抱える課題への小さな解決の芽が潜んでいるのかもしれません。(S)
(参考)農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/tosi_nougyo/t_kuwashiku.html
東京都産業労働局
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/nourin/nougyou/hozen/taiken
東京都農業振興事務所
https://www.agri.metro.tokyo.lg.jp/files/shimin/R6nougyou.pdf