「産業革命」から「旅行革命」へ:ストリートアートで高める街の魅力

現在、デトロイト市は世界でも有数の「ストリートアート」の街として注目を集め、訪れる観光客数も大きく増加しています。デトロイトの取り組みは、街の再生と観光振興がうまくマッチした事例として、日本でも学べる点が多いのではないでしょうか。 (エド)

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「お行儀よく」「みんなで使う場所はきれいにね」
子供の頃を思い返してみると、よく親や目上の人たちから言われた言葉です。そのせいか、街の壁に描かれた落書きをみると、なんとなく荒れたイメージを抱いた時期もありました。

しかし、世界はめまぐるしく変化しています。新しい技術、例えばスマートフォンの普及やロボットの進化などのデジタル環境だけでなく、アナログの分野でも大きく変わっているのです。壁に描かれた絵は「落書き」から「ストリートアート」に変わり、今や街を彩る芸術となりました。

デトロイトストリートアート

現在、デトロイト市は世界でも有数の「ストリートアート」の街として注目を集め、訪れる観光客数も大きく増加しています。2015年に開催された‘Public Art Fest’(パブリックアートフェスト)では、90名に上る世界的なアーティストが新たに45の壁画を作成し、ストリートアートの数は数百を超えるまでになりました。

デトロイト市は言わずと知れた「自動車産業」の街です。1913年にヘンリーフォードが立ち上げたライン生産方式による自動車の大量生産技術は産業と交通に大きな革命をもたらしました。ビッグ3(フォード、GM、クライスラー)の拠点となったデトロイト市は全盛期には185万人の人口を抱え、アメリカでも有数の経済都市として発展を遂げました。しかしながら、80年代以降、アジアの自動車会社との技術、価格競争の激化などからアメリカの自動車産業は一時の勢いをなくし、経済の破たんや人口減少、ドーナツ化による市街地の荒廃などの問題が大きくなっていました。
 市街地の再開発において、デトロイト市は一つの英断を下しました。それは荒廃していた時代に描かれた「落書き」や廃墟を壊すのではなく、「残して活かす」という選択でした。

デトロイトストリートアートデトロイトストリートアート


「落書き」はデトロイトの発展や衰退の歴史を私たちに伝え、廃墟は若いエネルギーに満ちた起業家やアーティストたちの拠点となり、廃墟の壁は芸術作品のキャンパスとなって、新たな観光資源を創り出しています。
 デトロイトの取り組みは、街の再生と観光振興がうまくマッチした事例として、日本でも学べる点が多いのではないでしょうか。

高速道路や鉄道などのインフラ整備はもちろん必要ですが、その街ならではの歴史や文化などの魅力を伝える独自のコンテンツが世界中から旅行者を惹きつけます。

日本には、まだあまり「ストリートアート」が話題となっている街はありませんが、街の魅力を高めるコンテンツの一つとして、今後は注目すべきかもしれません。


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写真提供:1xRUN