“役”についている人は12%・・・

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地域で役割を担っている高齢者は死亡率が12%減少する

地域で役割を担っている高齢者は死亡率が12%減少する
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Social participation and mortality: does social position in civic groups matter?

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高齢化が進む日本において、いかに健康な状態を維持するかということは、非常に大きな課題です。千葉大学、東京大学、ハーバード大学の研究チームは「地域で役割を担っている高齢者は死亡率が12%減少する」という研究結果を発表しました。

研究チームは、自治会や老人会などの組織に参加している65歳以上の高齢者1万271人を約5年間追跡し、役員(会長、世話役、会計係など)かどうかで、死亡状況が異なるかを調査しました。役割を担うことで違いがあるかという調査はこれが初めてのものです。

その結果、役員経験者の死亡リスクは、通常のメンバーと比べ12%減少していることが分かりました。研究チームは、その理由についてはまだ不明な点も多いものの、組織内で高い立場に就き役割を与えられることで、生きがいや自尊心が高まったことが原因の一つと考えられるとしています。

すべての人が役員につけるわけではありませんが、退職後に地域になじめず引きこもりになってしまう高齢者(特に男性)が社会問題化していること等からみても、人間にとって社会や人とのつながりがあることは非常に重要であり、それが健康に関係していることは、近年のさまざまな研究によって明らかになってきています。そして、人とのつながりは、高齢者に長く旅行やレジャーを楽しんでもらうための大切なファクターのひとつでもあります。

当社が実施した「シニアのライフスタイルと旅行に関する調査(2016)」では、普段、町内会やPTAの集まりなどに時間を使っていると回答した60歳以上の人は、他の人と比べて、レジャーや趣味などに積極的に時間やお金を使っており、普段話す人や一緒に出掛ける人も多い傾向がみられました。
また、レジャーやお出かけの頻度が増えるきっかけになることはなにかを聞いたところ、60歳以上では、「誘ってくれる人ができれば」「旅行の計画や準備をしてくれる人がいれば」が経済的な要因についで多く、旅行やレジャーの機会を増やすには、旅行に「誘う人」の存在が大きいことが分かります。そしてこれは、旅行やレジャーに「誘い合う機会がある」ことが重要ということができるのではないでしょうか。

【図1】現在、時間やお金を使っていること(複数回答)
現在、時間やお金を使っていること(グラフ)

【図2】レジャーやお出かけの頻度が増えるきっかけ(60歳以上)(複数回答)
レジャーやお出かけの頻度が増えるきっかけ(グラフ)

現在、一人旅をする人は増加傾向にありますが、旅行の実人数は減少しています。しかし、今後お金や時間をかけたいことに「旅行」をあげている高齢者が多い(参照:「シニアのライフスタイルと旅行に関する調査」)ことからみても、「旅行に誘われれば参加したい」と思っている人たちは一定数いると思われます。これからは、旅行に「誘い合えるような場づくり」もビジネスとして必要になってくるのではないでしょうか。