日本、過去最高の「4位」

印刷する

世界経済フォーラム(WEF)が発表した2017年版観光競争力ランキングで日本が過去最高の「4位」

世界経済フォーラム(WEF)が発表した2017年版観光競争力ランキングで日本が過去最高の「4位」
Source
世界経済フォーラム

数字を
読み解く

先日ダボス会議で知られる世界経済フォーラム(WEF)の観光競争力の2017年版が発表になりました。日本の観光競争力は世界136の国と地域のうち過去最高位の4位となり、前回15年の9位から大きくランクを上げました。全体では1位がスペイン、以下フランス、ドイツ、と上位3位は前回と変わりませんでしたが、前回上位の米国、イギリス、スイス、オーストラリア、イタリアを抑えた結果となりました(表)。

観光競争力ランキング2017

この観光競争力レポート(Travel & Tourism Competitiveness Report)は隔年で発表されている世界の旅行・観光業に関する報告書で、17年版は評価算出基準となる4領域14項目90指標に基づき、各種調査により算出しています。各項目の前回からの推移は図のとおりです。日本は14の項目中10項目で順位をあげ、スコアも前回からの改善率は全体の中で最高となりました。ただし、今回よく見ると、指標は前回と全く同じわけではなく、比較できないものもあり、ランクに一喜一憂するのではなく、項目や指標そのものを検証することが大切と思われます。

観光競争力インデックス2017

前回日本の強みになっていた指標「顧客への対応」「鉄道インフラ」については17年版も変わらず1位でした。他に注目すべきは「旅行や観光の優先度」という項目において、「国がどれだけ旅行・観光産業を発展させることを優先事項としているか」という指標が17年は16位と前回の42位から大きく順位をあげたこと、また「観光客を魅了するためのマーケティングやブランディングがどれだけ効果的だったか」という指標が57位から27位に上昇したことでした。ここ数年地方創生の要となる産業の1つとして観光が注目され様々な施策や規制緩和が功を奏したことが評価されたとみることができます。

一方、「旅行や観光の優先度」で17年に順位が下がったのは、「国のブランド戦略(Country Brand Strategy)」という指標で、日本は42位と15年の2位から大きくランクダウンしています。これは、歴史、行先、ビーチ、食、買い物、地域、スポーツ、など観光に関わる45のカテゴリーについて、世界中の旅行者がインターネットで行った1288万に上るキーワード検索結果を分析し、得点化したものです(Bloom Consulting, Digital Demandより)。順位の低さは、国や自治体のサイトやSNSのアカウント上で十分な情報提供がされていない、あるいは情報提供がされていても45のカテゴリーの中で、旅行者にとって重要ではないコンテンツに偏っているといった可能性が示唆されています。このランクダウンには、例えば、もしかしたら国や自治体からの情報発信がウェブサイト中心で、SNSでの情報発信が進んでいない、あるいは発信している内容と海外からの旅行者が求めている内容が一致していない、といった可能性が隠れているかもしれません。いずれにせよ、どこにずれが生じているのか、見極めていく必要があるのではないでしょうか。

レポートでは調査全体を通じて4つのポイントを指摘しています。
(1) アジア・パシフィック地域の新興国における観光競争力が強化された。
(2) 世界が保護主義に動く中で、観光産業はデータ上では衰退していない。旅行・観光は‘橋はつくるが壁は作らない’。
(3) 第四次産業革命を受け入れる。観光産業において、デジタル化は必要条件。
(4) 環境問題と観光産業は、WIN-WINを目指す。

前回のレポートから2年の間で、経済、国際関係、技術、環境と世界はより複雑に動いていることが読み取れます。日本の観光振興も世界の中の一部であることを意識し、前述の‘壁ではなく橋をつくる’という言葉を大切にしていきたいです。