年間2万5千人が訪れるオープンファクトリー

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新潟県三条市の本社工場「SUWADA OPEN FACTORY」に世界中から年間2万5千人が来訪

新潟県三条市の本社工場「SUWADA OPEN FACTORY」に世界中から年間2万5千人が来訪

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毎年5月にロンドンで開催される「チェルシーフラワーショー」は、世界中から園芸家や愛好者15万人以上が訪れる英国王立園芸協会(RHS)主催の国際ガーデンショーです。このショーに2010年から日本から唯一出展・販売を続ける日本の地方企業があります。新潟県三条市にある諏訪田製作所です。今年のショーでは、世界の盆栽ブームを追い風に、盆栽ばさみの販売でこれまでで最高の売上を記録しました。

1926年創業の諏訪田製作所は、関東大震災(1923年)後、大工職人用の道具である「喰切」(注*)を製造したことを創業事業とする工具メーカーで、伝統の技術と道具の特徴を生かして、1995年以降、栗の皮むき鋏、つめ切り、花鋏、等の新しい製品を次々と誕生させています。最近話題になったニッパー型の「SUWADAつめ切りCLASSIC」は、約7,000円〜と高価ですが、フランスでヒットし、いまや世界が認める製品です。SUWADAブランドの製品を手にすると、その美しいフォルムとデザインがどうやって作られているのか、その切れ味がどのような技術で生み出されるのか、興味がわきます。

SUWADAつめきりclassic

諏訪田製作所は、ロンドンや香港に販売拠点を持ちながら、製品は新潟県三条市の工場で製作しています。本社工場は、のどかな田園地帯の中に建つスタイリッシュな建物で、「SUWADA OPEN FACTORY」として予約なしで見学が可能です。年間2万5千人が訪れ、ギャラリーには製品が時代ごとに展示され、この4月に開催された世界盆栽大会で展示された廃材で製作された盆栽や動物のオブジェも並び、遊び心をくすぐります。工場では、近代的な建物の中でガラス越しに見学者の方を向き黙々と作業を進める職人さんたちの仕事ぶりを見ることができます。

SUWADA OPEN FACTORY

廃材を利用して製作された盆栽のオブジェ「玄松(くろまつ)」「SUWADA OPEN FACTORY」の様子


三条市は、いわゆる従来型の観光地ではありませんが、隣接する燕市とともに、2013年から毎秋「燕三条 工場の祭典」を開催しています。金物や洋食器の“ものづくりのまち”として知られる燕三条地域の工場が、一斉に工場を開放し、訪問者に工場でのものづくりを体感してもらうイベントで、毎年多くの見学者が訪れています。ものづくりの姿を身近に見せることを通して、見学者は製品の機能だけではなく、作り手の思いや地域への愛着を感じ、使い捨てでなく本物の価値を知る貴重な機会になります。地域の名品を通じて新たな交流を生み出していく、新しい地域の姿の一つといえるでしょう。

*「喰切」:両側の刃がぴったりと合わさって対象を切る刃物