160万人が視聴

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東京レインボープライド2021のオンライン配信は、のべ約160万人に視聴されました。

東京レインボープライド2021のオンライン配信は、のべ約160万人に視聴されました。
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東京レインボープライド2021公式サイト

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中学校や高校でジェンダーレス制服が導入されたり、アナウンスの「Ladies and gentlemen」が見直されたりと、多様な性のあり方に対する関心が高まっています。そのような中、多様な性のあり方の認知を深めるイベントとして「プライドパレード」があります。LGBTQ*¹やLGBTQを理解・支援するアライ*²が中心となって、レインボーフラッグを持って街を練り歩いたり、LGBTQの文化や社会問題などを伝えるブースやパフォーマンスを出展したりします。
日本では1994年に東京ではじめてプライドパレードが行われ、開催を断念する年も何度かありましたが、現在では「東京レインボープライド(TRP)」としてゴールデンウィークに代々木公園で行うスタイルが定着し、コロナ前の2019年は20万人が参加するアジア有数のイベントとなりました。コロナの影響で2020年・21年とオンライン開催になり、「#おうちでプライド2021」と銘打ったイベントは、主催者の発表によると2日間でのべ160万人が視聴しました。前年の約44万から急増し、関心の高まりがうかがえます。筆者が調べた範囲では、2019年から20年の間に少なくとも19の都道府県でプライドパレードが開催されました。コロナの影響下でも多くの地域で、オンライン開催や規模の縮小などの対策を取りながら開催されています。
プライドパレードの歴史は50年以上前にさかのぼります。1969年6月28日にニューヨークのゲイバーで不当な捜査に反発した客が起こした「ストーンウォールの反乱」は、多様な性のあり方に向けて声を上げるきっかけとなりました。翌年の同じ日に、反乱を記念するとともに解放を求めて行われたデモ行進が、世界中に「プライドパレード」として広まりました。「誇り」を意味する「プライド」には、多様な性のあり方に誇りを持つという意味が込められています。1978年にサンフランシスコで行われたプライドパレードで初めて掲げられた6色のレインボーフラッグは、現在ではLGBTQの象徴になっています。
LGBTQが声を上げ続ける背景のひとつに、社会の中から隠されてしまうことが挙げられます。見た目ではわからないことが多い上に、暗黙のうちに多数派を前提としてしまう傾向によって、「LGBTQという言葉は知っているけれど、自分の周りにはいない」などの思い込みが生じることもあります。2021年4月に発表された「電通ダイバーシティ・ラボ×PRソリューション局共同調査」(電通LGBTQ+調査2020)によると、非LGBTQ+層の「家族や友人・知人にLGBTQ+がいる」と考えている割合は2割強にとどまっています(筆者再集計による)*³。また、P&Gが2021年5月に発表した「LGBTQ+とアライ(理解者・支援者)に関する全国調査」では、当事者の悩みで最も多かったのが「差別や偏見」で、2番目は「LGBTQ+当事者は周りにいないと思われている」ことでした。「私たちはここにいる」と声を上げることで、LGBTQの権利に対する関心を高められるかもしれません。
「東京レインボープライド2021」では、全国各地のプライドパレードを行う団体からのビデオメッセージが寄せられました。オンライン開催によって時間や場所の制約から解放されるうえに、プライバシーが守られるというメリットもあります。ただしイベントに参加しやすくなったとはいえ、LGBTQに関する認知や理解には地域差があり、各地域での取り組みが欠かせません。「LGBTQが自信をもって帰れるふるさとになってほしい」という思いを込めてプライドパレードを行っている地域もあり、各地でLGBTQが声を上げることの大切さを示しています。
LGBTQが初めて声を上げた6月は「プライド月間」といわれ、世界中で多くのプライドパレードが行われます。梅雨の季節、心の中にLGBTQへの理解を深める虹(レインボー)を架けてみませんか。(はし)

*1 LGBTQ:多様な性のあり方をもつ人々の総称。Qには性のあり方をあえて決めないか決まっていない「クエスチョニング(Questioning)」や、性的マイノリティであることに誇りをもって自称する「クィア(Queer)」の意味が込められています。本稿では性的マイノリティを「LGBTQ」と総称します。
 *2 アライ(Ally):LGBTQに対して理解・支援する人。LGBTQに友好的なことを意味する「LGBTQフレンドリー」よりも積極的な支援が期待されます。
 *3 電通LGBTQ+調査2020のプレスリリースでは、非LGBTQ+層が「当事者が家族、友人、知人にいるか」という質問に「はい」と答えた割合を、「知識」と「配慮意識」にもとづく5つのクラスターごとに示しています。それぞれのクラスターの人数と割合をもとに、非LGBTQ+層全体の「当事者が家族、友人、知人にいる」と考える割合を筆者が再集計しました。

<参考>
電通「電通ダイバーシティ・ラボ×PRソリューション局共同調査」(電通LGBTQ+調査2020)に関するプレスリリース(2021年4月8日発表)
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2021/0408-010364.html
P&G「LGBTQ+とアライ(理解者・支援者)に関する全国調査」に関するプレスリリース(2021年5月27日発表)
https://assets.ctfassets.net/ugm1tr5brd4w/4BOgMifu9fVeQIxGg0sIq4/f241d4a0416ccfe7a041a510c273986f/20210527P_Corporate_Ally_survey.pdf
東京レインボープライド2021(イベントサイト)
https://tokyorainbowpride.com/
NPO法人 東京レインボープライド (組織サイト)
https://tokyorainbowpride.org/