過去最高の200万人を突破!

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「サンリオピューロランド」の2018年度の来場者数は219万人と過去最高を記録。

「サンリオピューロランド」の2018年度の来場者数は219万人と過去最高を記録。
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『来場者4倍のV字回復! サンリオピューロランドの人づくり』(小巻 亜矢 著、ダイヤモンド社)

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東京都・多摩市にある「サンリオピューロランド」は、世界的な人気を誇る日本のキャラクター「ハローキティ」をはじめ、サンリオのキャラクターたちに出会える屋内型テーマパークです。都心から電車で1時間弱のロケーションで、施設面積は日本武道館の約2倍ですが、2018年度の来場者数は219万人と過去最高を記録しました。

同施設の創業は1990年。初年度の来場者数は194万人でしたが、その後は来場者が低迷し、一時期は108万人にまで落ち込みました。しかし、2014年度から徐々に回復し始め、日本のテーマパーク・遊園地産業の中でも高い成長率をみせています。この成長を支えたのは、サンリオピューロランドを運営する株式会社サンリオエンターテイメントの顧問を経て、現在は代表取締役社長の小巻亜矢氏の改革といわれ、ご自身の著書の中でも改革の数々に触れられています(*1)。来場者数を大きく伸ばした要因のひとつに、メインターゲットを子どもから「大人女子」にシフトしたことがありました。筆者が子どもの頃に訪れたサンリオピューロランドは、小さな子ども連れの家族が多かった記憶がありますが、最近は同世代の友人が大人同士で訪れている様子をSNSなどでよく見かけます。

近年、サンリオグループはライセンス事業を事業の柱のひとつとしてきました。サンリオキャラクターは国内にとどまらず海外でも人気があり、特に海外ではセレブがファンであることを公言するなど、大人女子ファンが多く存在しています。化粧品やアパレルメーカーなどとコラボした商品も多く、国内外の大人女子ファンからしてみれば、テーマパークに足を運ばなくても、サンリオは日常的な存在であり、その世界観は十分に伝わっていたものと考えられます。こういった中で、来場者増やすために、長い間子供向けイメージの強かったサンリオピューロランドのターゲットを大人女子に広げたのです。その仕掛けの1つが「ミュージカルやパレードを徹底的に作りこむ」ことでした。エンタメ界の第一線で活躍する有名クリエイターなどとのコラボレーションにより、ミュージカルではイケメン俳優による2.5次元ミュージカルを、パレードでは日本の代表的なポップカルチャーである“カワイイ”を徹底的に意識し、何度見ても新しい発見がある洗練されたものに刷新しました。また、天候など外からの影響を受けないという屋内型施設の強みを利用しながら、サンリオキャラクターの持つ非日常の世界観を体現しました。一方で、サンリオが昔から大切にしてきたメッセージを残しつつ、大人女子が共感できるようなストーリー性も持たせました。これらが功を奏し、総来場者数は増加、年間パスポートの利用率も増えているそうです。

ターゲットを大人女子に広げるということは、これまでの顧客層を失ってしまう可能性がないともいえません。しかしながら、恐れず進めたことで来場者は一時期の約2倍になりました。考えてみれば子供たちの母親は大人女子です。親である自分も一緒にキャラクターと楽しめば、子供は間違いなくうれしいはずで、再来場にもつながるでしょう。それが繰り返されればやがては未来の来場者につながる改革にもなったのではないでしょうか。

(*1)『来場者4倍のV字回復! サンリオピューロランドの人づくり』(小巻 亜矢 著、ダイヤモンド社)

(みや)