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カーボン・ニュートラルとは、人間の経済活動や生活により排出された温室効果ガスと、その吸収量が均衡されている状態のことを指します。

カーボン・ニュートラルとは、人間の経済活動や生活により排出された温室効果ガスと、その吸収量が均衡されている状態のことを指します。
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環境省:脱酸素ポータル「カーボンニュートラルとは」

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カーボン・ニュートラルとは、人間の経済活動や生活により排出された温室効果ガスと、その吸収量が均衡されている状態のことを指します。またそのために、森林保護などの削減活動に投資するなどして、排出される温室効果ガスの埋め合わせを行うことを、カーボン・オフセットといいます。
 電通が2021年12月に発表した調査では、「カーボン・ニュートラル」の認知について「内容まで含めて知っている」と回答したのは17.6%、「内容は知らないが、言葉だけは知っている(34.5%)」と合わせて52.1%との結果でした。2008年2月、環境省が「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」を発表してから10年以上が経過し、ようやく人口の約半数の人に認知されつつある段階です。

環境問題などSDGsへの関心が高まる中、小売りから自動車まで、幅広い業界でカーボン・オフセットの取り組みが聞かれるようになってきました。旅行に関して言えば、カーボン・オフセットを意識した旅行者の選択として、旅行先の現地では自転車を利用する、飛行機を利用する際の手荷物は減らす、近距離旅行では飛行機以外の交通機関を利用するなどの方法があります。特に欧州では数年前から、2.5時間以上のフライトの利用を避け、鉄道利用へ移行する動きが強まっています。
 日本でも取り組みは進められており、2021年には新幹線や鉄道を利用して発生した二酸化炭素排出量相当額を別途上乗せして発売する旅行商品や、修学旅行前にSDGsに関する事前学習を組み合わせ、実際にカーボン・オフセットを体感するサービスなどが発表されています。

このような取り組みは、一見新しく見えますが、2000年代初頭にもカーボン・オフセットが注目され、関連した商品や企画が話題になった時期がありました。きっかけは1997年に京都で開催された「国連気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)」です。会議で採択された「京都議定書」が2005年2月に発効され、日本の温室効果ガス削減目標は6%となりました。そこで政府と経済界が連携した国民運動としての「チーム・マイナス6%」が始まり、環境省の発表によると、2007年には企業などによる数十件のカーボン・オフセットに関する取り組みが登録されました。旅行業界でも業界初の取り組みとして、JTB関東から「CO2ゼロ旅行」という商品が発売されています。
 その後2008年のリーマンショックで経済が落ち込んだことや、2011年の東日本大震災では原子力発電所が停止し、火力発電を再稼働せざるを得なかったことなどもあり、いわゆる「エコブーム」の盛り上がりは一旦下火になったようです。そのような背景もあってか、環境省が発行していた、カーボン・オフセットレポートは2016年度で終了しています。関心の高い一部の人や企業を除き、消費者も企業も環境への配慮より、経済状況など自身に直結していることを優先せざるを得ないのかもしれません。

地球温暖化が深刻さを増す中、カーボン・ニュートラルの取り組みは一過性のブームではなく、消費者が生活の一部として日々の習慣にすることが重要です。企業は、話題性やプロモーション、旅行商品のコンテンツとして取り入れるだけではなく、消費者への啓発を図る上で、旅行であればツアーの一部に組み込まれているなど、無理なく自然に生活に取り入れることができる「仕組み」を提供することが、今後の鍵となるかもしれません。(Y)

<参考資料>
〇株式会社電通:電通、第4回「カーボンニュートラルに関する生活者調査」を実施(2021.12.9)
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2021/1209-010474.html
〇株式会社JTB:修学旅行でSDGsを学び、カーボンオフセットを実現「CO2ゼロ旅行プログラム」発売開始(2021.12.2)
https://press.jtbcorp.jp/jp/2021/12/sdgs-co2.html
〇環境省:カーボン・オフセット
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/carbon_offset.html
〇環境省:チームマイナス6%
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/kokumin/