限りなくゼロに近い開業費?

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新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛の要請で、私たちはこれまで経験したことのない生活を送ることになりました。特に「食事」については、アンケート調査などによると、多くの人が「外食」を減らし、「自炊」や「テイクアウト」、「デリバリー」が増えたと答えています。その結果、飲食店は苦境に立たされ、テイクアウト用のメニューを用意したり、Uber Eatsに代表される飲食宅配代行サービスに出店したりという動きが見られました。

新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛の要請で、私たちはこれまで経験したことのない生活を送ることになりました。特に「食事」については、アンケート調査などによると、多くの人が「外食」を減らし、「自炊」や「テイクアウト」、「デリバリー」が増えたと答えています。その結果、飲食店は苦境に立たされ、テイクアウト用のメニューを用意したり、Uber Eatsに代表される飲食宅配代行サービスに出店したりという動きが見られました。

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一般的に飲食店の開業費は平均で約1000万円、運営費の基本であるF「food(材料費)」、L「labor(人件費)」、R「rent(家賃)」の「FLRコスト」は平均で売上の約70%~80%必要になると言われています。これに販促費を加えると、利益は10%前後しか残らないのが飲食経営の基本的な収益構造です。

一方で店舗を持たないゴーストレストラン(クラウドキッチンやシェアキッチンを利用したオンライン専門レストラン)などと呼ばれる無店舗型飲食店を開業した場合、実店舗の開業と比較し、開業費を約90%抑えることができます。また運営費も、例えばUber Eatsの場合、手数料35%で、注文受付から配達まで一貫して任せることができ、人件費などを抑えることが可能です。デリバリー市場の広がりには、このような飲食店の存在も大きいようです。

日本におけるデリバリーの起源は江戸時代という説があります。歌舞伎十八番の「助六」の演目にはうどん屋が大きな出前用の箱を担いで登場する場面があり、当時からデリバリーは行われていたと類推できます。社会の変化と共に、飲食店の出前のしくみは変化を遂げ、高度経済成長時代は、核家族化の進行や所得の上昇によって、食生活の中に定着していきました。

外食・中食市場情報サービス「CREST」を展開するエヌピーディー・ジャパンの調査によると、2018年の日本のレストラン業態(小売店、自販機、社員食堂、学生食堂を除く、宅配ピザを含む)におけるデリバリー市場は4,084億円となっており、2015年の3,564億円から3年間で14%以上成長しています。日本国内の年間成長率は3%程度ですが、韓国(10%)、中国(8%)、イギリス(8%)など世界各国と比べると少なく、国内市場はまだ拡大しそうです。

そのような中、実店舗を持たずに、デリバリー特化型の事業参入を支援する会社も現れ始めました。店舗リノベーション等の事業を展開する株式会社建築商売は、デリバリーに特化した新サービス「Our Kitchen」というクラウドキッチンの事業を開始。クラウドキッチンとはネット注文とデリバリーに特化した客席の無い店舗であり、全てが揃ったプロユースのキッチンを「初期投資なし」で利用することができます。デリバリーサービスの登録や配達員の確保、マーケティングなど、料理以外の全てのサポートが含まれているため、本格的なデリバリー事業の開業がすぐに可能です。これまで飲食業に挑戦したい想いがあっても、金銭的ハードルのある人たちに新しい道を拓いています。

今後の飲食業経営は、外出自粛という新しい出来事をきっかけに、実店舗経営による独自性や立地優位性を重視するか、実店舗とデリバリーの併用か、初期投資をかけずにスピードで勝負する無店舗経営かの選択となります。時代の変化が早いのと同じで、飲食業経営の変化も早くなっていきそうです。(し)

(参考1)株式会社建築商売 プレスリリース(2020.5.25)
 (参考2)エヌピーディー・ジャパン株式会社 外食・中食 調査レポート(2019.4)