マイカー利用が40%から20%に半減

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フィンランドのヘルシンキでは、「MaaS」(Mobility as a Service)アプリ「Whim(ウィム)」)を利用している人のマイカー利用率が40%から20%に

フィンランドのヘルシンキでは、「MaaS」(Mobility as a Service)アプリ「Whim(ウィム)」)を利用している人のマイカー利用率が40%から20%に
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MaaS Global

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今年のお正月はトヨタ自動車の「トヨタイムズ」の広告をよく目にしました。そのなかで「トヨタは自動車を作る会社から、移動に関わるあらゆるサービスを提供するモビリティカンパニーなる」と宣言しています。自動車が1台も登場しないこの広告を見て、「MaaS(マース)」という言葉がひらめきました 。

「MaaS」とは、“Mobility as a Service”の略で、出発地から目的地までの移動ニーズに対して最適な移動手段をシームレスに1つのアプリで提供するなど、移動を単なる手段としてではなく、利用者にとっての一元的なサービスとして捉える概念(国土交通省)です。私たちは普段、何の疑問も持たずにICカードで電車に乗り、タクシー料金は現金やカードで支払い、高速道路料金はETCカードで支払う、といった行動をしています。もしこれらが1つのモビリティとして定額で利用できたり、目的地までのルート検索と同時に予約・精算までが1つのアプリで完了できたりすると便利だと思いませんか?世界で「MaaS」の取り組みが最も進んでいるのはフィンランドです。フィンランドのヘルシンキでは、「MaaS」アプリ(MaaSグローバル社「Whim(ウィム)」)を利用している人のマイカー利用率が40%から20%に半減し、公共交通やタクシーの利用が増えています。

「MaaS」という考え方が広がった背景には、やがて訪れる自動運転への時代が背景にあります。完全自動運転が実現すると、運転手が不要となるため料金は大幅に下がり、タクシーやカーシェアリングの利用が増え、移動の手段としてマイカーを保有していた人は手放してしまうかもしれません。すでに今の時代は「商品・サービスを提供しサービスを購入してもらうこと」ではなく、「商品・サービスを使った体験でエンドユーザーを含めた顧客に満足を感じてもらうこと」に移行しています。

小田急電鉄が、2019年中に箱根などで「MaaS」の実証実験をすることを発表していますが、「MaaS」の主体は必ずしも自動車メーカーや公共交通というわけではありません。人々が何を欲しがっているのかを考え、地域や高齢者や障がいを持った人といった社会課題に特化していくことで、周辺事業も含めてアイディア次第で移動に関わるサービスを広げていくことができます。観光業としても、二次交通の問題やユニバーサル対応など、「MaaS」に関わる機会は増えてきそうです。国や地方自体、IT企業、移動の利便性が向上した際の土地の資産価値の上昇を見込んだ不動産業や金融業など、あらゆる産業で「MaaS」への注目が集まっています。

「MaaS」が目指すのは、単に移動手段やサービスの統合ではなく、「MaaS」をきっかけに社会環境そのものを変えることです。これはまだ世界でも前例がありません。実現に向けては「MaaS」によって私たちの住む街や生活がどう変わっていくか、それによって行動や価値観がどう変わっていくのか、想像力を豊かに考えることが必要ではないでしょうか。

(しら)