890世帯の島で5人に1人が登録

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大分県姫島村で暮らす島民は、5人に1人があるサービスを利用しています。サービスの名前は“姫島わたるくん”。島での暮らしに欠かせないフェリーの情報を提供するサービスです。 このサービスは、島にサテライトオフィスを開設したIT企業によって開発されました。

大分県姫島村で暮らす島民は、5人に1人があるサービスを利用しています。サービスの名前は“姫島わたるくん”。島での暮らしに欠かせないフェリーの情報を提供するサービスです。 このサービスは、島にサテライトオフィスを開設したIT企業によって開発されました。
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姫島ITアイランド構想

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大分県姫島村は、国東半島の北西の瀬戸内海に浮かぶ人口1,987人(2020年2月末時点)、890世帯の島です。この島で暮らす島民は、5人に1人があるサービスを利用しています。サービスの名前は“姫島わたるくん”。島での暮らしに欠かせないフェリーの情報を提供するサービスです。 “姫島わたるくん”は、「姫島ITアイランド構想」(注)により島にサテライトオフィスを開設したIT企業によって開発されました。

テレワーク・ノマド…、働き方に関する様々な言葉を耳にするようになってきました。働く場所や時間は固定のものではなくなりつつあり、IT企業を中心に、地方にサテライトオフィスを構える例も増えてきています。2017年、姫島にも2つのIT企業がオフィスを構えることになりました。姫島は、大分空港から車とフェリーを乗り継いで約1時間、いわゆる本土から遠く離れた離島ではありませんが、それだけに、仕事で毎日島外に通う島民や、島に高校がないために、毎日海を渡って通学する高校生もいます。彼らは、姫島港と対岸の国見町伊美港を20分で結ぶ村営フェリーを利用して、通勤・通学していますが、天候によって欠航になることもあり、島民にとって、村営フェリーの運航状況は島で暮らす上で重要な情報です。最新の運航情報は、村が運営するHPに掲載されていますが、毎回HPを確認しなければいけないという手間がありました。

島にサテライトオフィスを開設した「Ruby開発」の社員も同じ不便さを感じていましたが、不便を解消するために何かできることはないかと思案した結果、LINEアプリを用いた運航状況通知システムを構築することを思いつきました。アカウントは“姫島わたるくん”と名付けられ、島外から移住している20代の女性が書いた姫島のキツネ踊りをイメージしたキャラクターがプロフィール画像となっています。アカウントの登録者数は、口コミで広がり、2018年5月に1人だった登録者は、6か月後には263人に、2020年2月には440人を超えています。増加推移をみると、2019年8月の登録が特に多くなっていることがわかります。お盆シーズンと重なった台風10号の襲来によるフェリーの欠航が影響していると思われます(図1)。当初は運航情報を通知するだけであった“姫島わたるくん”には、現在は、毎週日曜日の朝に姫島村のHPの新着情報が配信されています。暮らしているだけでは気づきにくい島の情報を知る良い機会になると好評です。

姫島で暮らす島民にとっての“日常のちょっとした不便”は、移住者の視点から見た発案によって、解消されました。“ITアイランド”は、働き手の働き方と暮らしを豊かにし、地域に雇用を生み出しただけでなく、地域の課題の解決をももたらすものでした。こうした取り組みは地域にやってきた企業が“どのような可能性を秘めているのかを住民に示す糸口としても有効です。また、地域の将来を担う子供たちにとっても、将来の生き方や働き方についてのイメージや自らの可能性を見出すきっかけになるのではないでしょうか。

(はたはた)

 

データ・画像提供:(株)Ruby開発