実は36%の人が利用している音声メディア

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世界20か国における「ポッドキャスト」の1か月の利用率調査によると、韓国は53%、ドイツは21%、日本でも23%あり、全体では36%でした。

世界20か国における「ポッドキャスト」の1か月の利用率調査によると、韓国は53%、ドイツは21%、日本でも23%あり、全体では36%でした。
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Statist社 Podcast Popularity Across the Globe(2019.1)※ロイター社の発表を基にStatist社が作成

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新型コロナウイルスの感染拡大により、4月7日に安倍内閣総理大臣による緊急事態宣言が発令されました。これに先立ち、ドイツのメルケル首相が、3月18日にドイツ国民に向けて発したメッセージが心を打つと、日本でも話題になっていました。「親愛なる国民の皆さん」で始まるメッセージは、現在の深刻な状況と一人ひとりが今やるべきこと、外出の制限や人との距離をおくことなどが、具体的で分かりやすく伝えられていました。全文を読んでいると、ふと、“ポッドキャスト”という文字に目が留まりました。ポッドキャストは、最近、日本では人気が再燃などと話題にあがることもあるようですが、ドイツの首相の演説に具体例として示されるほど、海外ではメジャーなのでしょうか。魅力はなんなのでしょうか。

“ウィルスが及ぼす社会的影響に逆らうクリエイティブな方法はたくさんあります。祖父母が寂しくないように、ポッドキャストに録音する孫もいます。愛情と友情を示す方法を見つける必要があります。Skype、電話、メール、そして手紙を書くという方法もあります。”

(引用:3月18日新型コロナウイルス感染症対策に関するメルケル首相テレビ演説、
翻訳:ドイツ在住ギュンターりつこ氏 )

ポッドキャストは2000年代前半に登場した、音声や動画のデータファイルを、インターネット上で公開した番組のことを指します。近年はYouTubeやInstagramなどの、視覚的なメディアが注目されてきた中、最近ではイギリスのキャサリン妃も、2月の出産直後にポッドキャスト番組に出演、またオバマ前大統領も昨年、音楽配信サービスであるSpotify上でのポッドキャスト番組の制作を発表しています。
ロイター通信が2019年に、ヨーロッパ主要国にアメリカ、日本、韓国を加えた20ヶ国に対して行った、ポッドキャストの1か月以内の国別利用率調査によると、最も高い利用率だったのが韓国で53%、ドイツは21%、日本でも23%ありました。20ヶ国全体では36%であり、前年より2%増加しています。(図)。

出典:Statist社 Podcast Popularity Across the Globe(2019.1)
※ロイター社の発表を基にStatist社が作成

世界でポッドキャストの利用が広がっている理由の一つに、音声ならではの『ながら聴き』ができることが挙げられます。動画の場合、視覚も聴覚も使うため、何かをしながら利用することは比較的難しいと考えられます。一方、音声の場合、運動をしながら、料理をしながら、仕事をしながらなど、『ながら』利用が可能となり、動画とは異なる場面での利用機会が期待できます。公開されている内容はデータとしてダウンロードが可能なため、時間や場所を問わず利用できる点が利点です。さらに、ポッドキャストは誰もが視聴者であり、同時に制作者になることも可能です。公開される内容は、マスの視聴者を対象としているラジオとは違い、自由度が高くテーマ性が深い、大きくはないけれど、特化した趣味趣向の番組が多く存在することも魅力と考えられます。

『いつでもどこでも何かをしながら、自分好みの番組を聴くことができること』、この点が他のメディアにはないポッドキャストならではの、体験価値を見出しているのではないでしょうか。日本でもこの4月に初のポッドキャストアワードが発表されています。ポッドキャストならではの長所を活かすことができれば、日本でもまだまだ普及の可能性はありそうです。

(な)