観光経済新聞再掲 ~マーケットを読む・「スマートフォンを通じて伝える地域の魅力」 他

観光経済新聞10月19日掲載された「スマートフォンを通じて伝える地域の魅力」では、インターネット環境の提供や旅行者も発信しやすい仕組み作りの重要性を、観光経済新聞10月26日に掲載された「新しいシニアに向けて」では、シニアの旅行にインターネットが与える影響について紐解きます。

早野 陽子

早野 陽子 主任研究員

印刷する

目次

スマートフォンを通じて伝える地域の魅力(観光経済新聞 10月19日掲載)

JTB総合研究所主任研究員・早野 陽子

ここ1、2年でのスマートフォンの広がりは目覚ましい。総務省が2013年6月に発表した「平成24年度版通信利用動向調査」によれば、2013年1月~3月時点の世帯別スマートフォン保有率は50%弱。昨年同時期の29%から大きく増加した。電車内でスマートフォンを利用する人々の姿は日常となり、多くの人にとってインターネットは昼夜問わずアクセスするものとなった。旅行中でも、それは例外ではない。

JTB総合研究所が2013年の9月に実施した「スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査」の結果では、全体の57.6%が「宿泊施設を選ぶときにインターネットの接続環境」を重視し、中でも「Wi―fiが無料で使えること」(27.6%)が1位となった。また回答者の75.1%は「旅行中」に情報収集をするためにスマートフォンを利用しており、旅行者にとってスマートフォンを快適に利用できる環境は極めて重要であることがわかる。

ではインターネットで伝達される情報には何を求めているのだろうか。「旅行中」にスマートフォンで調べることとして上位にあがったのは、昼ご飯や夕ご飯を食べる場所、お茶ができる場所など「食」に関すること。「交通手段」や「土産物を購入する場所」も多い。宿泊施設や主な観光場所など主な予定だけを旅行前に決めておき、旅行先での細かい行動はその場で調べるという旅行者も増えているのだろう。

また、SNS(ソーシャルネットワーク)から発信される情報で「よい」「共有したい」と思う旅行中の写真は、男性は自然風景や乗り物などの風景写真、女性は食事風景や体験シーンなど。男性に比べ、女性は「人」が旅行を楽しむ姿により共感するようだ。年代別にも違いは見られ、若い世代は「仲間との記念写真」、年齢が上がると「動物や花の写真」なども好まれる。地域の魅力を「誰」に伝えたいか、商品を購入してほしいか、対象を明確にし、共感を得られやすい写真や企画をホームページやパンフレット、SNSに活用すればより効果的に旅行者に訴求することができそうだ。

また、SNSの浸透によって、旅行者は情報を受信するだけではなく、旅行中に情報を発信する媒体としての役割も果たすようになった。回答者全体の42%が自分の旅行について発信した経験があり、若い世代ではさらに経験率は上がる。旅行者自身の発信を促す工夫も必要になる。例えば倉敷では、「シャッターお助け隊」が観光客の記念写真の手伝いをする。旅行中投稿しやすい仕組みづくりや興味をそそる撮影スポットなどの機会提供はインターネットの接続環境とともにいっそう重要になる。

以上のことは、日本人だけに限らない。韓国、香港、台湾など日本よりスマートフォン普及率が高い国の旅行者にとって旅行先でスマートフォンを活用することはごく自然な行動だが、日本はアジア諸国と比べてインターネット、特にWi-Fiの接続環境が整っているとは言えず、日本旅行の不満へと繋がっている。世界の旅行者から選ばれるためにも、インターネット環境の提供、共感できる情報の発信、旅行者も発信しやすい仕組み作りへの取り組みは不可欠となるだろう。

新しいシニアに向けて(観光経済新聞 10月26日掲載)

JTB総合研究所主任研究員・早野 陽子

Gパンに革ジャン、娘さんとおそろいだという鮮やかなニット。今年の春に実施したシニア世代へのインタビューに参加してくれた人々の服装だ。一昔前の「シニア」という言葉から連想されるイメージとは全く異なるシニア像がここにある。

インターネットの利用についても同様だ。情報通信白書によれば、2012年末の平均インターネット利用率は65~69歳で6割を超えた。若い世代ほど多くはないものの、2008年には37.6%だったことを考えると、急激な増加と言える。シニアの旅行にインターネットが与える影響も大きく、インターネットを活用しているシニアだけを見れば、若い世代よりむしろ、インターネットを重視する度合いが高い傾向も見られる。

当社の調査では、「宿泊先を選ぶときにインターネット接続環境を重視する」と回答した60歳以上の割合は63.6%と全体平均の57.6%を上回った。「旅行先を選ぶにあたり影響したこと」でも、「宿泊施設のサイト」(32.0%)が「家族や友人との会話」に次いで2位となった。
団塊世代が完全退職を迎えつつある今、このように若い世代と変わらない感性を持ち、インターネットを使いこなして旅行を楽しむ新しいシニア世代へしっかりと対応していくことが必要だ。

若い世代と変わらない感性を持つとはいえ、年齢に伴う変化がないわけではない。「現役のころは、退職したらこんな旅行もしようと夢があったが、退職したら仕事のストレスがなくなり、ただの観光旅行には行きたくなくなった。いつでも行くことができると思うと腰も重くなる。何か今行かなくては、と背中を押してくれる理由が必要。友達も話してみると同じように感じている」とある男性は語る。その男性が最近行った旅行は、酒蔵元からのメールマガジンで知った「米作りツアー」。自分が実際に植え、稲刈りした米で作られたお酒を飲める、という内容だ。田植えや稲刈りは時期が決まっているため、行かねばという気持ちになることに加え、自分の趣味である酒の知識も深めることができるからだ。

「今」行かなければできないこと、ただの観光旅行ではなく、自分を深められる体験、このような旅行がシニアの背中を押す。
新しいシニア世代の旅行を後押しするためには、インターネットも積極的に活用しつつ、若い人が好むデザインやテイストで伝えること。旅行へ出かけるきっかけとなる、今しかできないこと、ただの観光ではなく、自分を深めるための「学び」や「気づき」を提供することなどが肝心だ。