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FRE~EDO~M ~3つの大陸で育まれた自由な視点から’今’をみる~

日本は世界初の水素エネルギー都市となるか?

環境への負荷が大変少ないことから、次世代エネルギーとして大きく期待される水素エネルギーを活用した公共交通の整備を進める動きが欧州で広がりを見せています。日本での取り組みも進み始めました。

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21世紀に入ってからというもの、環境意識はかつてないほど高まり、地球環境への対応は人類にとって最優先ともいえる課題となっています。地球温暖化防止を目的とした京都議定書が2005年から実行され、さらに2015年12月には世界150か国の首脳が集まるCOP21において、2020年以降の地球温暖化策に関する「パリ協定」が採択されました。

水素エネルギーは環境への負荷が大変少ないため、次世代のエネルギーとして大きく期待され、水素エネルギーを活用した公共交通の整備を進める動きも広がりを見せています。

欧州では、2003年からCUTEプロジェクト(Clean Urban Transport for Europe)としてアムステルダム、ロンドン、バルセロナなど9都市で燃料電池バスが走り始め、現在ではEU全体で90台の燃料電池を利用したバスが走るようになりました。今後はさらに100台以上のバスが追加される計画も進められています。2016年11月にはロンドンでゼロ・エミッション・バスの国際会議が開催され、22か国から250以上の企業が参加するなど大きな成功を収めました。

また、フランスの鉄道車両メーカー、2017年3月、アルストム社は世界に先駆けて、燃料電池によって大量輸送が可能な鉄道車両のテストランに成功しました。この電車は2018年からドイツで走行予定です。

燃料電池車を利用することによるメリットは様々ですが、主なものは以下です。

  1. エネルギー効率がよく、低コストで長距離走行が可能
  2. 走行時に排出するのは水(水蒸気)だけなので、環境に優しい
  3. 走行時の音が静か
  4. 二酸化炭素を排出しないため地球温暖化対策になり、国の目標達成に貢献できる

一方、アジアに目を向けてみると、中国においても地球温暖化防止への様々な取り組みが行われています。あまり知っている人は多くないかもしれませんが、中国における風力発電の設備容量は2013年時点で世界最大で、約3割のシェアを占めるほどです。2017年3月、中国の鉄道車両メーカーである青島四方機車車輌有限公司は広州市に隣接する仏山市に8台の燃料電池トラム(定員285人)を供給することを発表しました。新しい路線は全長約17.4キロ、20駅となる予定です。

では、日本での取り組みはどのように進んでいるのでしょうか?
政府は2017年4月11日に、石油や天然ガスに代わるエネルギーの導入加速に向けた関係閣僚会議を開き、安倍晋三首相は「世界に先駆けて水素社会を実現させる」と述べました。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入も一段と推進し、年内に基本戦略が策定される予定です。

実は日本は世界に先駆けて家庭用燃料電池を発売した最初の国なのです。2009年に発売された「エネファーム」は、当初は価格の高さなどから普及が進まなかったものの、新モデルの導入や補助金の導入や製品価格の値下げなどにより、ここ数年普及に弾みが付き始め、2017年5月には累計で20万台が導入されるまでになりました。家庭への導入により、CO2が38%抑えられるとともに、年間5万円前後の光熱費削減(3人以上の家族の場合)が見込まれます。

自動車業界においても、燃料電池への取り組みは進んでいます。2014年12月、トヨタは量産型としては世界発となるMIRAIを発表しました。また、2017年2月、トヨタは東京都に初の燃料電池バスを提供しました。2020年までには、100台程度の追加も予定されています。
また2017年5月末には、トヨタ、日産、ホンダなど11の企業が2020年までに160の水素ステーションを日本国内に設置することを合意し、2025年には320ステーションへの拡大も検討されました。

すべての車に燃料電池が搭載され、エンジン音のない街を想像してみましょう。静けさときれいな空気、緑あふれる空間が街の中に広がります。また住宅で燃料電池が使用され、光熱費が下がれば、その分をレジャーに充てることができるかもしれません。今のところ、ゼロ・エミッションである交通網を実現している国や町はありませんが、日本のどこかで初めて実現することができれば、世界中の話題を集めそうです。

出所:COP21, CHIC, The Telegraph, Bloomberg, IEA, Greenpeace