地域資源を宇宙ツーリズムで読み替えるー宇宙を切り口にした新たなデスティネーションマネジメントー
宇宙産業への注目が高まる中、宇宙ツーリズムは地域振興の新たな切り口としても期待されています。宇宙関連施設の有無にかかわらず、地域資源を宇宙の文脈で再解釈することで生まれる観光の可能性を考察します。
宇宙ビジネスの世界規模での市場規模は2024年4月に公表された「Space: The $1.8 Trillion Opportunity for Global Economic Growth」によると、2023年時点で6300億ドル(約100兆円)。そして、今後は2030年に1兆1600億ドル(約185兆円)、2035年には1兆7900億ドル(約286兆円)になると予想されています。
話題に事欠かない宇宙。日本においても北海道大樹町、茨城県、福井県、大分県などの自治体や地域企業が中心となり、ロケット発射場整備や衛星製造の拠点化が進むとともに、宇宙を起点としたまちづくりも行われ、2030年の宇宙産業の拡大が期待されています。
憧れや希望が高まっている一方で、宇宙に関する施設がない地域やこれから宇宙産業へ参入される地域では、宇宙ツーリズムを遠い存在に感じられているのではないでしょうか。宇宙ツーリズムはSpaceXのように宇宙に行く旅行のことだけではなく、「宇宙を感じる」そんな体験を含んでいます。自然や食文化などの地域の資源を宇宙の分野で掛け合わせ、独自の体験や経験を提供する、新しい宇宙ツーリズムの可能性を秘めています。
1. 地域の食文化 × 宇宙食
旅行の楽しみの一つがその土地ならではの“食“ですが、宇宙は四季もなく食材もない場所。民間の宇宙旅行が現実味を帯びてきている中で、宇宙での食の楽しみを実現するため、”宇宙食を美食に“という問いに対する「G+Astronomy Project」が実施されています。


XR技術による没入体験と、重力がある地球だからこそ味わえる京料理の魅力を掛け合わせることで、宇宙という切り口で千年の都である京都の和食に新たな可能性を創り出しています。
「いつか宇宙でもこの料理が食べられているかもしれない。」
参加者と宇宙に思いをはせながら食の未来を考える、京都独自の体験が構築されています。
2. 火山クレーター × 月面
アイスランドのアスキャでは、月面に似た火山の地形を生かし、月面歩行を模擬体験できる「 Apollo Mission Training」をツアーにしています。この地では、1960年代にアポロ計画の宇宙飛行士が訓練を行っており、現在は地域の自然地形を宇宙の文脈で再解釈して観光価値を創出しています。
宇宙ツーリズムというと、ロケット発射場や宇宙旅行そのものをイメージしがちですが本稿で紹介した事例から見えてくるのは、宇宙そのものではなく、「宇宙という視点」が地域資源の価値を再発見する手段になっているということです。宇宙関連施設やロケット発射場を持たない地域であっても、地域固有の自然、歴史、文化、食を宇宙の文脈で再解釈することで、身近に宇宙を感じられる体験を地域にも創造できる可能性があります。
参考文献・参照資料
1.World Economic Forum(2024) Space: The $1.8 Trillion Opportunity for Global Economic Growth World Economic Forum レポート
2.日本経済新聞「宇宙をめざす京料理と日本酒、京都の老舗料亭で食体験イベント」日本経済新聞記事
3.Visit Askja Apollo Training in Iceland Visit Askja 記事










