日本版DMOの72.3%

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事業区域内の「住民満足度」を把握していないと回答したDMOは72.3%、うち、今後も把握する予定がないと回答したDMOは10%。

事業区域内の「住民満足度」を把握していないと回答したDMOは72.3%、うち、今後も把握する予定がないと回答したDMOは10%。
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総務省行政評価局:日本版DMOに対する「訪日外国人旅行者の受入れに関する調査」

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地域における観光地経営のかじ取り役として、各地に日本版DMOが設置されています。今年9月に総務省行政評価局が公表した、日本版DMOに対する「訪日外国人旅行者の受入れに関する調査」では、事業区域内の「住民満足度」を把握していないと回答したDMOは72.3%で、うち、今後も把握する予定がないと回答したDMOは10%でした。国は2003年より、「住んでよし、訪れてよしの国づくり」を合言葉に観光立国を推進しています。必ずしもDMOが主体的に調査を行う必要はないと思いますが、市民の観光についての理解を把握することは、最近よく聞かれるようになったオーバーツーリズム対策だけではなく、新しい時代に即した交流の創造につながる可能性があるのではないでしょうか。

京都市は、2004年に策定した「京都観光振興計画2020」を今年5月に見直し、オーバーツーリズムへの対策を進めています。観光客数を削減するのではなく、様々なアイディアにより分散させる取組みが進められており、その取組みの一例は次の通りです。

1.夏季の期間に世界遺産の二条城を通常よりも1時間早く開城させ、「朝観光」の推進を推進すること。(集中する観光時間の分散化)
2.従来は観光スポットとして認識されていなかった「伏見の酒蔵」を活用した、外国人向けのツアーを開発すること。(集中する観光地の分散化)
3.桜と紅葉の混雑ピーク時以外の季節にも訪れてもらうことを目的に、「青もみじ」という青葉のもみじをアピールすること。(集中する季節の分散化)

観光客を意図的に分散させることで、オーバーツーリズムの改善が期待されています。また、京都市は、従来から観光客を対象としたマーケティング調査を実施していますが、「京都市市民生活実感調査」や「市政総合アンケート調査」などの調査で市民の観光に対する意識についても聞いています。調査からは、観光客が増えたことで生活に影響が出てきているという市民からの意見が見られます。これらの調査やオーバーツーリズムに対する取組みは別々に行われていますが、結果を共有して対策を進めていくことも大切なのではないでしょうか。

一方、観光に対する考え方も、目的をもって自分の好きな地域でその土地ならではの体験や、地域住民との交流が若者の間で目的になりつつあります。当社の調査でも若い世代の方が市域の人々との深い交流を望むという結果が見られています。地域においては農家民泊やオープンファクトリーなど、様々な産業に携わる人々と観光客の交流が増えてきており、地域の魅力づくりの形成に繋がっています。持続可能な観光地域づくりを実現する上では、地域住民や地域の企業など、従来の観光事業者以外との連携も必要不可欠です。市民の観光についての理解を把握することは、観光振興に関わりたい住民や企業の発掘や、地域と観光客の交流促進に繋がり、さらに広い生活者との触れ合いを生むことになると思います。

(尚)