『子連れ海外旅行』を考える(その5) ~ 海外旅行における”子連れ”というバリア(1) ~

海外旅行経験が豊富にあり、独身時代には国内旅行感覚で気軽に海外に行っていた女性たちですら、母親になったとたん、"子連れ"というバリアに阻まれ、大好きな海外旅行をあきらめている。いったい何が障害となっているのか。そのバリアフリー化の可能性とともに考えてみたい。

中島 ひろみ

中島 ひろみ

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今年の夏休み、ジャルパックが家族連れをターゲットとした企画旅行、成田発「ハワイファミリージェットチャーター6日間」を催行した。通常のハワイツアーよりも旅行代金がやや高く設定されたこの商品を完売できたのは、子連れ海外旅行のニーズを上手く取り込んだ結果であろう。

カーテンで仕切った「授乳ゾーン」の設置、「家族みんなでお近くシート」、「特製おむつ」、「子どもの世話に慣れたキャビンアテンダントの乗務」、「子ども向けアニメ映画の上映」等の家族向けに特化したチャーター便ならではの様々な機内サービスはとても魅力的である。

しかし、このツアーの最大の魅力は、チャーター便を利用することで、「子どもを長時間狭い機内で大人しくさせることができるのか」という、子連れ海外旅行における親たちの最大の不安材料を軽減したことだ。親たちは、「子供が泣いたり、わめいたり、うろうろ歩き回ったりして、他の乗客に迷惑をかけ、気まずい思いをしたくない」のである。それが、このツアーでは乗客全員が子供連れなのだから、例え子どもが少々騒いでも、”お互い様”というわけで、気兼ねしなくて済む。ツアーの参加者362名のうち、2歳未満の幼児が通常ツアーの約6倍だという31名であったことからも、このツアーのコンセプトが小さい子どもを持つ親のニーズに応えたものになっていると言える。

すべてのファミリー向けツアーをチャーター便利用にする事は不可能だが、『ファミリー』がツアータイトルについているだけで、機内に仲間が多いことが予想され、かなり心強い。また、タイトルに『ファミリー』が付いているということは、『安心して子どもと参加できる良いツアー』であることを意味する(と認識させる)。つまり、「往復の飛行機」と並ぶ子連れ海外旅行のもうひとつの大きなバリア、「滞在先での不安」を「ファミリーのためのツアー」であることを謳うことで軽減している。

『ファミリーツアー』の全てに色々なファミリー向けのサービスを付ける必要は必ずしもない。子連れに適した旅行先であることが重要なのだ。旅行中の様々なトラブルを最小限にし、いかに楽しい旅行にできるかは、旅行先の選択が大きな鍵となる。「子連れで海外には行きたいが、どこに行ったら良いのかわからない」人が案外多いのである。

では、子連れに適した旅行先であるための、主な必要条件を挙げてみよう。

  1. なるべく飛行機に長く乗らなくて良い。
  2. 時差が無い・小さい。
  3. 治安や衛生状況が良い(水道水が飲めるなど)。
  4. 病気やけがの際にすぐに病院に行ける。日本語が通じるとなお良い。
  5. オムツやベビーフードなど、必要なものが買い足せる。
  6. 子どもと一緒に行けるレストラン、子どもが食べられるメニューが豊富。
  7. 親も子どもも一緒に楽しめる”何か”がある(できる)。
  8. けがをするような危険な場所が少ない/子供を安心して遊ばせる場所がある。

これらをすべてクリアする旅行先はかなり限られる。前述の商品の行先であるハワイも、条件の1と2についてはクリアしているとは言い難い。しかし、3~8はクリアしているので、充分子連れに適した旅行先であると言える。多少何かが欠けていても、「これだけ条件が揃っているなら大丈夫だ」と思ってもらえることが大事だ。多少のリスクはあっても、それを承知してさえいれば、必要な(心の)準備をすることができるのである。

次回も引き続き、海外旅行における”子連れというバリア”について考えていく。