お客様の心理分析が必要となってきた旅行業界!

2007年の日本人海外旅行者数は2006年を下回る可能性が高くなってきた。1964年の海外旅行自由化以来前年を下回ったのは僅か5回。80年第2次オイルショック、91年湾岸戦争、98年金融危機、01年米国同時多発テロ、03年SARS/イラク戦争とそれぞれ明確な原因があった。果たして2007年はどうか。

酒井 健太郎

酒井 健太郎

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2007年の日本人海外旅行者数は2006年を下回る可能性が高くなってきた。1964年の海外旅行自由化以来前年を下回ったのは僅か5回。80年第2次オイルショック、91年湾岸戦争、98年金融危機、01年米国同時多発テロ、03年SARS/イラク戦争とそれぞれ明確な原因があった。果たして2007年はどうか。高止まりの燃油サーチャージ、中国の食品問題・・・どれを挙げても前5回の原因と比べて納得性が弱い。マーケットの成熟化、若年層の海外旅行離れ、熟年層の伸び悩みなど現象はさまざまに説明できるが、なぜそうなっているのかはいま一つ説明がつかない。

海外旅行は旅行会社経由で販売されることが多い。旅行会社は消費者と直接接することでその嗜好性や傾向を把握し、商品造りや販売等に活かしてきた。しかしインターネットの進展に代表されるように、次第にお客様との接点が薄らぐようになってきた。そのことはとりもなおさず、お客様の心理的情報や行動が分かりにくくなってきたことを表す。とあるグループインタビューで参加者6名全員が旅行会社を経由せず海外旅行に行っている現状を目の当たりにし愕然としたことがある。まして海外旅行者数が減少している。

成熟化した他産業では、商品やサービスの開発のため消費者心理分析を日常的な業務の一環として実施している。これらの調査分析を、コンセプト、ターゲット設定、広告宣伝、流通チャネルなどの様々な課題の検討だけでなく、商品やサービスなどの開発にも役立てている。例えば飲食品業界は、消費者の健康志向に注目して、それまで見向きもされなかった低カロリーをセールスポイントとした商品の開発・販売を行ったところ大当たりした。このように、飲食品のみならず、自動車、住宅など様々な業界で、商品やサービスの開発のため消費者心理分析を日常的な業務の一環として実施している。

旅行業界は、従来から行っているアンケート調査による定量的な実態把握に加え、より積極的に定性的な実態把握を行い、「Reason Why?」(なぜ、そうなのか)を明確にしていく時期にさしかかっているのではないだろうか。その中から停滞又は減少しつつある海外旅行者数増加への道が見えてくるかもしれない。