「何となく節約気分」 -漠然とした将来への不安や社会の停滞ムードが消費や旅行に影響?

消費の低迷に歯止めがかからない。経済産業省の商業動態統計によれば大型小売店の販売額は19か月連続で減少し、特にここ半年ほどの百貨店の売上は対前年比で10%を超える減少が続いている。消費や旅行にどんな影響が出ているのだろうか。

早野 陽子

早野 陽子 主席研究員

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目次

実質的な影響4割、心理的な影響4割強で8割以上に何らかの影響

JTMが2009年9月に実施した「海外ショッピング調査」の結果では、2008年後半以降の景気低迷が家計に何らかの影響を及ぼしたか、との問いに対し、減収や資産の目減りなど家計に何らかの影響があったと答えた人が約45%。残りの55%は実質的な影響なしと回答した。しかし実質的な影響がないにも関わらず「何となく節約しようという気持ちになった」と回答した人は全体の約4割を超え、心理的な影響の大きさが伺える。

40代~50代に実質的な影響

年代別にみると、「何となく節約」気分な人たちは特に若い世代に多いようだ。一方、実際に家計に影響があった割合は40代~50代が最も高く、約40%が「年収が下がった」と回答した。
また、海外旅行での平均買い物額をみてみると、やはり40~50代で最も下げ幅が大きかった。
世界的な金融危機による企業の業績悪化により、賞与支給額や月額給与の減額による収入の減少や、リストラや無給休暇の取得、ワークシェアリングによる労働時間の減少などの、雇用調整が幅広く進んだことが、海外旅行における買い物額減少の要因と考えられる。
これまで比較的景気悪化の影響を受けていなかった40代だが、収入の減少が、子供の養育費がかさむ時期とも重なり、今後は少し海外旅行への動きが鈍くなる可能性もあるだろう。

旅行費用を抑えるためにはまず”安いパッケージ探し”から

では、具体的に旅行へはどんな影響があるのだろうか。 旅行費用を抑えるための手段として最も割合が高かったのは、「安いパッケージツアーを探す」で、約5割の人が選択している。次に続いたのは「現地での買い物費用を減らす」。特に「贅沢品やレジャーへの支出を減らした」旅行者がより現地での買い物費用を節約していた。意外にも「海外旅行を国内旅行に変える」の順位は高くなく、海外旅行に行かないのであれば、むしろ旅行自体を延期する傾向があるようだ。一方、全体の4割以上を占める「何となく節約」派や、年収は下がったものの、日常生活ではなく贅沢品を節約するレベルに留まっている回答者は「近場の旅行先に変えて行く」と答えた割合も比較的高かった。こういった人たちの動きがここのところの韓国人気にもつながっているのだろう。

2009年、海外旅行のきっかけは「円高」「サーチャージの値下げ」「ツアー代金の値下げ」

「海外旅行へ行きやすくなったと感じたこと」のトップ3は、円高、燃油サーチャージの値下げ、ツアー代金の値下げであった。今年は需要喚起策として旅行会社の間でツアー代金を下げる動きが広がったが、ある程度の効果はあったようだ。また、少数意見ではあるが、羽田空港やローカル空港から海外へ行かれるようになったことなど、利便性の向上がきっかけとなったという回答も見られた。2010年には羽田空港の国際化が進展する。大きな海外旅行のきっかけとなることを期待したい。

【海外ショッピング調査概要】

調査時期:
2009年9月20日~29日
調査対象者:
日本全国に住む20~89歳の男女で、過去7か月以内に海外旅行をした人
有効回収数:
520
調査内容:
直近の旅行先、買い物費用、購入した場所、購入したブランド、旅行に対する意識など