国際航空運賃の下限撤廃と旅行会社

国土交通省は2008年4月から日本発PEX運賃の下限制限を撤廃した。それにより東京~欧州間に往復6万円を切る新割引運賃が登場した。パッケージ旅行の座席確保はますます厳しくなる。

田中 靖

田中 靖

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国土交通省は2008年4月から日本発PEX運賃(注1)の下限制限を撤廃した。

PEX運賃は航空会社が利用者に直接販売する公示運賃で、消費者が航空会社のサイトで直接購入できる「正規割引運賃」であるため、下限値の撤廃により消費者にとって低価格な国際航空券を入手できる手段が拡がることになる。

実際に4月以降の運賃を見ると、全日空は下限撤廃を機にエコノミークラスの新割引運賃「スーパーエコ割」(注2)を新設している。この「スーパーエコ割」の最安値は東京~香港27,000円、東京~バンコク27,000円、東京~欧州55,000円で、全日空では「スーパーエコ割」と「オススメホテル」を組み合わせて低価格を強くアピールしている。

近年の航空会社は、機材の小型化と同時に高収益のビジネスクラスの増席を進めているが、その結果、座席数、特にエコノミー席の供給が減少傾向にある。さらに訪日客の増加により海外で販売される座席数も増えており、日本の旅行会社の「パッケージ旅行」向けに割り当てられる座席数は減少の一途である。

PEX運賃の下限撤廃によって航空会社が直接販売する座席の販売シェアが高まれば、旅行会社に割り当てられる座席はさらに減少するであろう。「パッケージ旅行」に必要な航空座席の確保はますます厳しくなるのである。

注1)PEX運賃(Special Excursion Fare)
各航空会社が独自に設定する地域・区間ごとの割引運賃を指す。
日本発のPEX運賃はこれまでIATA(国際航空運送協会)が設定する区間・地域ごとの共通運賃(IATA-PEX)の30%を下限とする下限制限があった。

注2)スーパーエコ割(Super Ecowari)
全日空が2008年4月出発から新たに設定したエコノミー割引運賃の名称
往路発が日曜以外、復路発が土曜以外で間に土曜日を挟む旅程(往路金曜
発、復路日曜発など)で、空席さえあれば出発当日でも購入できる。