最大の資源の宝庫は都市観光

都市は観光資源の宝庫です。都市の楽しみ方に「歩いてめぐること」があります。「活気ある商店街」は地域らしい都市の魅力の一つですが、ある商店街で行った「つまみ食いウォーク」の事例をご紹介します。

中根 裕

中根 裕 主席研究員

印刷する

週刊トラベルジャーナル誌 ・執筆 2008年11月10日号

都市は観光資源の宝庫です。都市の楽しみ方に「歩いてめぐること」があります。「活気ある商店街」は地域らしい都市の魅力の一つですが、ある商店街で行った「つまみ食いウォーク」の事例をご紹介します。

「わが国最大の観光地は京都でも箱根・日光でもなく東京である」これはよく言わることです。勿論、皇居や浅草寺、東京タワーなどなど、価値ある純粋な観光資源は多々ありますが、東京へ訪れる来訪者の目的はそれだけではありません。週末にショッピング、観劇、デート等、東京での行楽を広い意味での観光ととらえれば、計り知れない人々が仕事以外で東京に訪れています。今、国内の地域は様々な課題を抱えていますが、その一つに地方都市の活性化があげられます。観光はもとより地域の産業や社会が元気になってもらうためには、地域の拠点となる地方都市が活性化することが大切であり、地域らしい文化や情報が集積している地方都市の魅力を観光の面からも見直そうとする動きが活発です。述べたように外の人から見た都市の魅力は、観光資源や施設だけではありません。そもそも都市を観光する上では、以下のような楽しみがあります。

都市観光の楽しみ

■ 都市観光の楽しみ

これは決してすべての項目で東京がNO.1であるとは限りません。都市と自然との調和や伝統的な街並み、地域ならではの文化、行事などはその地域でなければ体験出来ない価値と言えます。

そして、こうした都市に残される魅力を堪能するためには「歩いてめぐること」が何より大切です。バスや自動車で効率良く地区や施設をまわることも観光ですが、それでは気が付かない都市の魅力や顔があり、時速4kmで歩くからこそ感じ取れる楽しみが都市には隠れているのでしょう。

こうした地域らしい都市の魅力の一つとして、「活気ある商店街」があげられます。地方都市で地元の人に支持される市場なども同じでしょう。2年前に筆者は東京品川区の観光の計画に関わり、そのリーディング事業として「商店街つまみ食いウォーク」というのを実施しました。ウォーキングは今やシニア層の定番的活動ですが、品川区の戸越商店街は、面的な従来の商店街の形態を保ちながら、今も活気があり、商店街活性化に取り組んでいるところです。その商店街組合と連携し、ただ歩くだけでなく、商店街の各店舗が自慢の食材を一品づつ店頭で提供し、つまみ食いしながら歩いてもらおう、という企画でした。品川区内外から約3,000人の参加者がありましたが、一般の健康志向型のウォーキングとの違いは、年代層が30代から60代まで様々な人が楽しんでいたことです。来訪者からすれば、店舗自慢のシュウマイやお菓子をサービスとして店頭で食べられるだけでなく、そこには逸品の発見もあり、店の人との会話も繰り広げられ、地域の商店街の活気を感じとれることは、年齢によらず魅力的な「時速4kmの観光」に映ったのです。

 商店街つまみ食いウォークの参加者年齢構成

■ 商店街つまみ食いウォークの参加者年齢構成