ETC割引上限1000円廃止で今後のドライブ旅行は

2年前に景気対策の一環として導入された高速道路のETC休日料金割引(上限1000円)が、今年6月に廃止された。制度導入以降、休日の観光地で遠方ナンバーの車が目立つようになったが、この夏休み、旅行者が利用する交通手段に変化があるのだろうか。また今後、車を使った旅行はどのようになっていくのだろうか。

加藤 典嗣

加藤 典嗣 営業企画部長

印刷する

目次

ETC割引上限1000円導入がもたらしたもの

「どこまで走っても1000円!」。休日のETC利用車を対象に高速道路料金を上限1000円に割引する制度は、2009年3月28日から2011年6月19日までの2年2ヵ月余りの期間、大都市区間を除く高速道路で実施された。

制度開始当初は、格安感と話題性から各メディアがこぞって取り上げたことなどもあり、これまで行ったことがない所まで長距離を走行する人や、車中泊をしながら旅行する人が目立つなど、ドライブ旅行が注目を浴びることとなった。そして、都市圏から離れていても高速道路からアクセスの良い地域や、これまでボトルネックとなっていた橋の通行料が格安となった地域等、各地の観光地が賑わいを見せた。

一方で、GWや年末年始などのピーク時は例年にも増して厳しい交通渋滞が引き起こされたり、もとから宿泊施設が混み合う週末の利用に拍車がかかることにもなった。さらに、高速道路と競合するフェリー航路の減便や撤退が相次ぐなど、多くの課題も残している。

車利用による宿泊旅行

JTBでは、GW、夏休み、年末年始の予測時に定点的な調査(個別訪問調査)を行っているが、それぞれに旅行を予定している回答者に、利用交通機関を質問している(複数回答)。下表は各調査から、利用する交通機関として「乗用車」と回答した人の比率をまとめたものである。

資料:JTB 「ゴールデンウィークの旅行動向」「夏休みの旅行動向」「年末年始の旅行動向」

これを見ると、GW、夏、年末年始などピーク時の乗用車利用率は2009年GWから徐々に上昇し、ETC割引1000円上限が適用されて1年が経過した2010年GWにピークを示している。

ETC割引1000円上限が廃止された今夏の旅行ではどうだろうか。上記と同じJTB調査によると、新幹線や航空機の利用率は上昇しているが、乗用車の利用率がそれほど低下しているわけではない。

資料:JTB 「2010年夏休みの旅行動向」

今夏の調査では、旅行同行者として「家族連れ」を挙げる回答が増加(前年度+6.0ポイント)しているが、特に子供連れや三世代の旅行には車の利用が便利であり、1000円上限が廃止されても、車を利用した旅行が主流になっていると考えられる。

ETC割引1000円上限による旅行行動の変化

JTMがこのたび、ETC割引1000円上限の利用経験のある人に対して実施した調査*によると、導入時の行動の変化として「車で行ってみたいと思う地域が大きく拡がった」「今まで行ったことのない観光地へ行った」などの回答が多く、割引により遠くまで足を運んだ人が多かったことが窺われる。(この傾向は特に20代など若年層で顕著である。) 一方、「同じ旅行するなら週末(通行料上限1000円の適用日)にするよう努めた」との回答も28.5%と多く、特に60代では32.6%と全体を上回っている。一般的に平日にも旅行できることの多い高年齢層までもが週末にシフトすることにより、ピーク集中に拍車がかかったと考えられる。

さらに、1000円上限の廃止後にどのように変化すると思うかを尋ねてみた。 「できるだけ高速道路を使わず、一般道を利用することが増えると思う」が最も多い一方で、「ETC割引がなくなっても、旅行の移動には車を使うと思う」が25.6%、「特に変わらない」が26.9%となっている。

「できるだけ高速を使わず…」は特に20代など若年層の回答が多いが、「ETC割引がなくなっても…」は40代で最も多くなっている。この年代は家族連れで旅行する機会も多く、高速割引の有無に関わらず、利便性から車利用を選択することが多い。また、廃止後「特に変わらない」との回答者数は、割引導入時の「特に影響はない」との回答者数を上回っており、ETC割引を契機に経験した車での旅行が定着してきていることが窺われる。

ドライブ旅行意欲は今後も続くか?

高速道路料金の1000円上限によって、これまで訪れたことのない観光地を訪れる魅力や、長距離や景勝地をドライブする魅力に触れる経験をした人が増加した。こうした経験は「また、未訪の観光地を訪れたい」「たまには車で出かけたい」等の旅行意欲につながっていると考えられる。
1000円上限の廃止により、ドライブ旅行は、平日へのシフトと近距離へのシフトが、ある程度進むと思われる。平日に旅行できる層にとっては、平日の方が混雑も少なく、宿泊の価格メリットや良いサービスを享受できる。受け入れる観光地や道路にとっても、混雑の緩和が図られることになる。一方、遠くに行くほど通行料が高くなるため、訪れる観光地や宿泊地が自ずと近場になると考えられるが、走行距離や移動時間が減れば、観光地や宿泊地の滞在時間も延びるため、観光地における消費額も増加することが期待される。
2年余り続いた「1000円高速」。上限がなくなることによる変化はあるものの、導入を契機に喚起された旅行者の意欲自体は引き続き持続するのではないだろうか。

*調査概要
インターネットによる調査(実施2011年7月15日~19日)
首都圏・中京・京阪神に居住する20~60代の男女で、過去に高速道路のETC利用割引(上限1000円)を利用したことがある人2483人を抽出し、回答を得た。