口コミサイトの星の数に弱い訳

本や洋服をネットで購入したり、旅館・ホテルやレストランを予約したりする時、その商品の評価が載っている口コミや星の数を参考にするのではないだろうか。一般ユーザーが書きこんだ口コミの意見や評価は、プロや企業が与える情報よりも、信憑性を持って受け止められているように思える。なぜプロでもない一般ユーザーの意見がそれほど影響力を持つのだろうか?

早野 陽子

早野 陽子 主任研究員

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生活者に口コミの効用に関して聞いてみると、「いい意見だけではなく、悪い意見も知ることができるから」など、「利点と欠点の両方がわかることがメリット」という意見が数多く出てくる。

しかしプロでも必ずしも良いことばかりを言うとは限らないし、「悪い意見もある」ということだけでは、口コミサイトや評価がこれほど活用されている現象は説明しきれない。

この謎を解くのに役に立つと思われるのが、「弱い靭帯の強さ」仮説(マーク・S・グラノヴェッター:1970)である。

グラノヴェッターが行ったジョブ・マッチングの満足度調査結果によれば、半数以上の人が人的ネットワーク(いわゆる口コミ)で職を見つけており、自分にとって、何か重要な意思決定を行う際に、口コミからもたらされる情報が重視されていることが明らかとなった。

同じ人的ネットワークでも、日ごろから密なコミュニケーションを行っている人同士の「強い靭帯」から得られる情報と、たまにしかコミュニケーションしない、あるいは「知り合いの知り合い」といった「弱い靭帯」を通じて得られる情報を比較すると、弱い靭帯から得た情報で転職をした人の方が高い満足度を得ていたという。

つまり、いつも一緒にいる人からの情報は、「そんなこと、もう知ってるよ」と既知の場合も多いので、何か新しい有益な情報を得るためにはもう少し離れた関係性が重要、ということになる。

リアルだけの世界では、大抵の場合、弱い靭帯の情報は強い靭帯を通じて得られるものであったため、弱い靭帯の情報が常に豊富に手に入ったかというと、そうではなかったと思われる。

このことにあてはめて、インターネットの効用を考えてみる。インターネットがもたらした大きな恩恵の一つは、この「弱い靭帯」の情報量を飛躍的に増大させたということではないだろうか。

今や口コミサイトのコメントをみれば、「強い靭帯」を通さなくても、直接様々な情報を得ることができる。人々は、自分に役立つ「弱い靭帯」の情報を無限に近いほど手に入れたのである。

しかし、そこで生じた弊害が一つある。
それは情報量があまりにも増えてしまった、ということだ。
「弱い靭帯」の情報は個人では処理しきれないほどになり、自分が本当に欲しい情報に辿りつくことが困難になってしまった。そこで、評価の出番である。あまたある情報を簡単に整理し、判断を明快にしてくれるもの。それが評価の意味合いだ。

最近では、SNSのサイトで情報をシェアするようなことも増えてきた。これも、多くの情報から自分の友人や信頼する人が選別した結果、という意味合いで信頼性を持って受け入れられている。

そして、口コミ、SNSの次に来るものは何か? 自分たちが提供している情報を簡単に判断できる形に整理し、そこに信頼性を持たせるにはどうしたらよいのか? そんなことを考えてみるのも、これからの生活者に効果的に情報を伝達するためのヒントになるだろう。