第1回JTB総合研究所「旅行マーケットセミナー」第二部パネルディスカッション「旅行マーケット変化の予兆を捉える」

JTB総合研究所主催の旅行マーケットセミナーを2014年9月9日、フクラシア東京で開催しました。セミナーは二部構成で、第二部として、年代や性別を超えた広がりを見せる「ひとり旅」や若者における旅行回帰、海外旅行の予約早期化といった昨今の現象をふまえ、「旅行マーケット変化の予兆を捉える」と題するディスカッションを展開しました。

黒須 宏志

黒須 宏志 フェロー

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目次

【第1回 JTB総合研究所 旅行マーケットセミナー 第二部レポート】

第二部パネルディスカッション「旅行マーケット変化の予兆を捉える」

「地域にとっても観光客にとっても使いやすい『域内交通』の充実で地域を元気に」

旅行需要を創造する取り組みついて、これまで「移動すること」にこだわり、高速バス事業にイノベーションを起こしてきた村瀬氏は「人が移動した時に起こる経験、出会いが人と地域社会を元気にする」という考えのもと、「若い人が平均的に週末の遊びに使う1万円程度で移動できる、ローコストな交通手段が必要と感じた」とWILLER設立時の思いと、旅行に行きたいと考えている人たちの旅行を実現できる仕組み(価格、デザイン、機能など)で需要を創造してきた経験を語った。その上で、北近畿タンゴ鉄道の運営に参画する意味を「これまで目的地に移動しても地域内での移動がしづらかった。地域の人にとっても、旅行者にとっても、使いやすい「域内交通」を充実させることで、旅行の需要も広がり、日本全体の経済活性化も期待できる」と述べた。
また、低価格化が進む高速バス市場においても、「付加価値がはっきりしている商品は、価格を下げることなく販売ができている」と述べ、「万人受けするものを作るのではなく、ターゲットを定めて価値観を提供する」ことで需要の創造は可能であると語った。

誰かに認めて欲しい「自己承認欲求」や一人の時間を持ちたい主婦の「ひとり旅」が鍵

「おひとりさま」や「バブル世代」のマーケットを中心に、女性の消費に独自の視点で切り込む研究で知られる牛窪氏は、現在の市場を「思っている以上に経済的には厳しい状況」と語り、「これまで普段の消費を削り、特定の分野にお金を使うメリハリ消費で乗り越えてきた世帯が、それでは立ち行かなくなっている」と指摘する。しかしながら「その中でも、楽しむ為の消費、仲間内で盛り上がる為の消費は増えている。自己承認欲求を満たすといった、ちょっと外した付加価値で需要は想像できる」と語った。
また、「結婚後のひとり時間を求めているバブル世代や団塊ジュニア世代の「おひとり妻」、子供世帯とのつながりが強い団塊世代はまだまだ眠っている市場」とし、これまでの経験にとらわれず、ターゲットとする世代がどのような生活環境の中で、あるいは、どのような価値観で過ごしてきたかを考える事が重要になると述べた。

垣根を越えたアライアンスで、エリア全体での需要創出を

小里は、「個別事業者単体だけではなく、エリア全体での需要想起の取り組みによる成功事例が増えている。このようなことからも、これからは地域の住民を含め、垣根を越えたアライアンスを考える事が重要な視点となっている」と指摘した。

今後、日本の人口がさらに減少していく中、ますます「移動人口」による地域の活性化が重要になってくると考えられる。まだ眠っている市場の発掘や業種、立場を超えたコラボレーションによる付加価値の創出などで、いかに新しい需要を創出し、移動人口を増やしていくことができるのかが今後の課題となるだろうと語った。

以上

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