中国人の訪日旅行動向(1)

中国人は日本の何を見ているのか。今後の中国アウトバウンドを担うマーケットはどこにあるか。中国での現地取材を通じて、中国訪日旅行の現状を読み解く。

河野 まゆ子

河野 まゆ子 主席研究員

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2008年初頭、中国における日本への旅行を象徴するキーワードは3つ、「富士山」「買物」「団体観光ビザ」である。中国の大手旅行会社へのヒアリングによれば、中国のアウトバウンドマーケットの主要デスティネーションはいまだタイをはじめとした東南アジアであるものの、2007年にもっとも伸び率が大きいデスティネーションのひとつが日本だという。現状では、「ゴールデンルート」と呼ばれる大阪から京都や富士山、箱根、ディズニーランドなどを経由した東京までのルートを巡る、10万円以内の廉価なパッケージツアーが販売実績の殆どを占めている。

中国の旅行会社の企画担当者は口を揃えて「日本は他のアジア諸国に比べて、旅行者がリピーター化する可能性が非常に高い。買物や温泉、和食などの文化、エンターテイメントや景勝地などがバランスよく多種多様にある」と言い、新しいデスティネーションの開発に努めている。一方で、訪日団体観光ビザが中国発訪日旅行の一層の増加を阻む最も大きな要因となっており、訪日旅行の個人旅行化や、旅行嗜好や流通経路の多様化にはまだ時間がかかりそうだ。

さて、実際の「日本リピーター」はまだ少ないものの、確実にその数を増やしつつあるという。その最も大きな目的はやはり「買物」で、その対象は電化製品からブランド品、薬、サプリメント、洋服など幅広い。かつて中国の富裕層が買物デスティネーションとして選択するのは香港と決まっていたが、近年、香港でコピー品が多く出回るようになったことを受け、その行き先は日本に変わった。中国人が日本で買物をする理由は、「本物である」「高品質である」「安全である」という品質重視の考え方と、「ブランド品が本国よりも安い」という価格志向、および「本国にないものが買える」というブランド性の3点に集約される。一度の買物旅行で100万円以上を消費する人も少なくはないという。

日本での買物を後押しする要因のひとつが、都市部におけるクレジットカードの急速な普及である。クレジットカードの発行枚数は、2007年末までに約6000万枚に達するほどの勢いで急増しているという。特に上海や北京などの大都市では、大企業に勤務する20~30代前半のサラリーマンやOLを中心にクレジットカードの保有率が上昇し、海外における買い物の利便性を高めている。

では、今後の中国のアウトバウンドは、どのようなマーケットが担っていくのだろうか。

(次回につづく)