海外旅行中の両替事情 ~現金依存型の日本人旅行者~

長期休暇時期ともなると、成田空港の両替所に長い列ができるのはお馴染みの光景だ。 海外旅行に出掛ける際に、日本の旅行者は現地通貨をどのような手段で、幾らくらい準備していくものだろうか。海外旅行中の両替事情について読み解く。

河野 まゆ子

河野 まゆ子 主席研究員

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JTMでは、海外旅行者の両替事情および海外ATMの利用状況等についてのWEBアンケート調査を行った。回答者が直近で海外旅行に行った際の、両替金額と手段を示したのが図1である。「現金両替(日本国内で)」は回答者の71.2%、「現金両替(海外で)」は54.7%と半数以上が利用しており、手っ取り早く確実な現金主義が圧倒的多数であることがわかる。一方で、「海外ATMからのキャッシング」は16.1%、外貨あるいは日本円のトラベラーズチェックを現地で現金化する「海外でのT/C両替」は9.0%に過ぎない。

なお、実際に両替をした人に限ってみると、1回の旅行での外貨両替総額(日本国内でのT/C両替額を除く)は、10万円未満が過半数を占めた。手段別では、「現金両替(日本国内)」が「5~9万円」(26.4%)、「10~14万円」(25.7%)の順に多い(図2)。対照的に、「海外ATMからのキャッシング」や「現金両替(海外)」をみると「3~4万円」以下の小額両替が40%を超えている。旅行日数や現地の物価にも拠るが、旅行の全日程をほぼカバーできるだけの現地通貨(あるいは汎用性の高い外貨)を予め日本国内で準備しつつ、補助的な両替手段として海外での換金・キャッシングを利用するという傾向がうかがえる。

旅行先別に総両替金額をみると、近距離のアジア圏は「5~9万円」が最も多く、10万円未満が過半数となったほか、5万円未満の人も30%を超えている(図3)。一方、ハワイや米国、および1週間以上の日程になりやすいヨーロッパでは「5~9万円」および「10~14万円」が主流となり、「20万円以上」も20%以上を占める。なお、その両替方法を選んだ理由(図4)をみると、「クレジットカードで支払うので現金はほとんど要らない」「主な換金手段はいつもこの方法」「日本で当座の金を両替するようにしている」などが上位に並んだ。訪問国の両替事情や治安、物価等によって両替方法を変えるというよりも、個々人がこれまでに慣れ親しんだ両替のやり方をどの国でもほぼ同じように適用している、ということのようだ。


一方で、過去5年間の海外旅行頻度別に両替方法をみると、銀行やクレジットカードのキャッシングを海外で利用する率はまだまだ低い(図5)。海外ATM引出しは「海外旅行を年に2回以上」の人の29.4%が利用しているが、「年に1回以下」は13.0%と、約17ポイントの差異がみられた。これに対応するように、「海外旅行を年に2回以上」の人は「年に1回以下」の人よりも日本での現金両替額が少なく、海外での両替額が多い傾向にあり、海外旅行経験を重ねるにつれて訪問・滞在先での両替を利用する機会が増えてゆくように見える。海外での両替・ATMは便利だけれど、不慣れな言語やシステムに伴う操作方法の不安、路上にあることによる治安の不安など、利用経験のない人にはかなりの不安要素を伴うものである(図6)。
どの国に行く場合でも、(1)出発前あるいは到着後すぐに、(2)現金で、(3)旅行行程をほぼカバーできる金額を用意し、(4)必要に応じて現地で小額を両替する、というのがこれまでの一般的な日本人の両替スタイルだった。今回の調査結果から、海外旅行経験を重ね、いつ、どこで、どうやって両替できるかわからないという不安が払拭されるにつれて、旅行者が「現金持ち歩き主義」から徐々に脱却してゆくさまがうかがえる。確かに、両替方法の多様化が進めば、まとまった現金を常に持ち歩くという不安とそれに伴うリスクは軽減できる。日本人旅行者が「現金持ち歩き主義」から脱却し、「ひとまずの現金があればよし、あとはカードで」というスタイルが今後浸透してゆくためには、海外ATMそのものの多言語化を待つだけでなく、ATM利用に際した注意点や外国語操作画面の翻訳説明書などをまとめたハンドブックを提供するなど、セキュリティ・治安面の不安の払拭や言語の壁をサポートするサービスを、カード会社や旅行会社などがいかに提供できるかが重要なポイントになると思われる。


*調査は、関東・東海・京阪神および近畿地方在住の20歳以上男女、計1,200名を対象。2009年03月19日~23日にかけて実施。