バブルジュニアの消費を探る:草食系は意外にブランド好き?

歴史をひも解くと、古代ギリシャ時代の文献や、さらに古くはエジプトのヒエログリフにも「今どきの若者は…」という論調の記載がみられるという。年長者が若者に苦言を呈したい気持ちは古今東西、不変なのかもしれない。JTB総合研究所が実施した、いくつかの調査結果から、今どきの20代の旅行や消費意識をみてみたい。

早野 陽子

早野 陽子 主任研究員

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目次

「モノ消費」にも「コト消費」にも積極的なバブルジュニア

ここ20年ほど世代の動向を見てきた中で、見えてきたことがある。それは、親世代と子世代は価値観を共有するということだ。たとえば、物のない戦時中を耐え、戦後の高度成長期には三種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)など生活を豊かにする商品の普及を担った現在の70代は、いわゆる「モノ消費」に積極的であり、欧米の文化にも比較的素直な憧れを持っている世代だ。彼らの価値観は子供であるバブル世代(現45~55歳)に受け継がれ、バブル経済の後押しの中で、その旺盛な消費意欲が存分に発揮されたのだと考えられる。一方、安保闘争などを経験した団塊世代は、上の世代や米国への反発からか、「モノ消費」や欧米文化に対しては少し距離を置いた考え方を持っている。団塊ジュニアも、どちらかというと同様の価値観を持っているように感じる。ではバブルジュニアとしての20代はどうなのだろうか。社会全体の消費の流れとしては、「コト消費」「体験価値」を重視する傾向が強まっており、20代も例外ではない。しかし、親世代の多くがバブル世代であることから、ブランド好きで、モノ消費にも積極的である側面もあるようだ。

親から受け継いだ旅行好きのDNA

親の世代であるバブル世代は、卒業旅行で海外旅行を楽しみ、バブル崩壊後も家族旅行へ積極的に出かけた世代でもある。1994年のホンダ オデッセイのヒットを皮切りに、急速に市場に広がったRVタイプの車でキャンプをしたり、子供が小さいうちから家族で海外旅行へ出かけたりすることも、それほど珍しいことではなかっただろう(図1)。

「旅行離れ」などと言われることもある20代だが、出国率の推移をみてみると、ほぼ全体と同様の動きをしており、決して20代だけが海外旅行へ出かけなくなっているわけではない(図2)。2014年は円安や海外情勢の影響などで減少傾向に転じたものの、ここ数年はむしろ出国率は上昇傾向だったのだ。

実際、当社が行った調査結果を年代別にみても、小学生時代の家族旅行経験は20代で最も高く、また、20代が国内観光旅行へ「年に2回以上行く」割合は45.9%、海外観光旅行へ「年に1回以上行く」割合は14.0%で、いずれも60代の67.7%、22.1%に次いで2位だった(図3、4)。

子供の頃に体験した旅行の楽しい思い出が、現在の旅行意欲の高さへとつながっていると考えられるのではないだろうか。

SNSがバブルジュニアの旅行を後押し

総務省が発表した「平成25年通信利用動向調査」(平成26年6月27日)によれば、平成25年末における20代のソーシャルメディアの利用率は65.5%に達した。ではSNSは旅行へどのような影響をもたらしているのだろうか。当社の調査結果を見ると、男女で共通しているのは「昔の知り合いとSNSでつながって再び交流するようになった」「SNSの投稿を見て行ってみたいと思った場所へ出かけた」「SNSで知った情報で、いいと思ったものを購入した」など、SNSが交流やお出かけ、消費のきっかけとなっていることだ。面白いのは、男子は「SNSで盛り上がり、メンバーを募って旅行やレジャーに出かけた」というように、グループ単位の動きが比較的多く見られるのに対し、女子は「SNSで知り合った人へ会いに出かけた」と、個人的な動きにつながっており、男女で違いが見られることだ。

いずれにしても、SNSは20代の旅行意欲を、より一層喚起している媒体であると言うことができるだろう。しかし一方では、常につながっていることへのストレスからかSNSでの発信に気を使ったり、発信を控えたりするなど、他人に気を使うKY世代ならではの「SNS疲れ」も見られる。20代の前半と後半だけを取ってみても、使うアプリやSNSとの関わり方が変化してきているように感じる。親の世代が若い頃には経験しなかったデジタル環境がバブルジュニアにどのような影響を与えていくのか、今後の動きは注意深くみていく必要がありそうだ(表1)。

ブランド好きは親ゆずり。「周囲の人がよく知っていて人気がある」ブランドであることが大事

当社の調査からショッピングの実態をみてみると、20代が海外旅行でブランド物を購入した割合は73.8%と全体より4ポイントほど高く、ブランド物のショッピングも比較的多いようだ。ブランドをある意味、品質を保証してくれる指標と考え、価値を認める親世代の影響もあるのではないだろうか。では、どのようなブランド物を好むのか?というと、自分用に購入するブランドとして「友人や家族など、周囲の人がよく知っていて人気があるブランド・商品」が、61.2%と最も高くなった(図5)。最近では、80年代に流行ったような、一目でどんなブランドかわかるロゴ入りのブランド物の人気も復活しつつあるようだ。購入したものをSNSでアップすることが多い今どきの20代にとって、周囲の人から認められるブランドを手に入れることは、重視したいポイントなのではないだろうか。

さらに、20代は海外旅行先でのショッピングで家族や友人から頼まれた買い物をする割合が49.0%と、全体の32.2%を大きく上回った(図6)。調査結果を見たときは意外な印象を受けたが、20代の息子と海外旅行へ出かけた際に、謎の一端が解けたような気がした。SNSで海外旅行へ来ていることを発信すると、その投稿を見た友人たちから、「いいね」と同時に、「そこにいるなら、これ買ってきて」といった多くのリクエストが届くのだ。周りへ気を使う世代としては、リクエストを無下に断るわけにもいかず、土産物を探して奔走しなければならない状況に陥り、前述のSNS疲れにもつながっているのかもしれない。

親世代とは異なり、社会貢献に高い関心を持つ一面も

20代の生活上の意識について聞いた結果をみると、「社会のために役立つような仕事がしたい」「いつか世界を変えたい」といった項目が高くなった。また、チャリティ商品であれば、必要がなくても買おうという気持ちになる、と回答する割合が他の年代と比較して高いなど、社会性が高い一面も垣間見られた(図7)。社会のグローバル化や東日本大震災など、様々な環境を経験する中、親から受け継いだものだけでなく、バブルジュニアも独自の価値観を獲得してきたと言えるのではないか。

ここまで見てきたように、消費経験が豊富なバブル世代の子供にあたる20代は、モノ消費にもコト消費にも積極的で、一般的にイメージされている、何かと消極的な若者像とは少し異なるようだ。海外では「ミレニアル(新千年紀)世代」などとも言われ、新しい消費のカタチを作る世代としても注目されている世代であるが、日本においても、今後の動きには期待できるのではないだろうか。

とは言え、消費経験が豊富で、かつバブル崩壊後の不況の中で、本当に自分にとって必要なものと、そうでないものを見分ける力を培った親世代を手本としてきたことから、コストに見合った価値に対してはシビアな目を持っており、容易には攻略できない熟練した消費者でもある。また、今後の新しい技術や社会トレンドが、さらなる変化を彼らに与えるであろうことは想像に難くない。日本のバブルジュニアが世界のミレニアル世代と同様、新しい消費を形作っていくのか、それともガラケーのように独自の進化を遂げていくのか、また次の世代には、どのような影響を与えていくのか、今後も注目したい。

参考資料)
ミレニアル世代(19~25歳)の価値観と旅行に関する調査 ~ 日本における スマホネイティブ世代のライフスタイルと旅 ~
https://www.tourism.jp/tourism-database/survey/2014/11/millennial-generation/

スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査(2014)
https://www.tourism.jp/tourism-database/survey/2014/10/smartphone-2014/

「アート旅(美術館や芸術祭などを楽しむ 旅(美術館や芸術祭などを楽しむ 旅(美術館や芸術祭などを楽しむ旅)に関する調査」
http://www.jtbcorp.jp/scripts_hd/image_view.asp?menu=news&id=00001&news_no=1931

海外ショッピングレポート(2014)~日本人海外旅行者の動向と購買行動~
https://www.tourism.jp/tourism-database/survey/2014/11/shopping-oversea-2014/